ユナイテッドアローズ メンズチーフバイヤー 豊永譲司氏インタビュー

2021.12.05

ユナイテッドアローズ メンズチーフバイヤー 豊永譲司氏「色もテイストも中庸が好き。その中に答えがある」

豊永譲司 Joji Toyonaga

ユナイテッドアローズ メンズチーフバイヤー。1983年神奈川県横浜市生まれ。文化服装学院卒業後、ユナイテッドアローズ入社。ウィメンズのショップからキャリアをスタートし、その後ディストリクト ユナイテッドアローズでセールスパーソンとアシスタントバイヤーを兼任。2013年よりユナイテッドアローズのバイヤーを務め、現在に至る。

 

 

 

豊永譲司さんはご自身の装いもバイイングする服もシンプルだけれど、

 

よく見るとどこかにお洒落心をくすぐるポイントがあって、いつもとにかくカッコいい。

 

「お店の中では正直あまり目立たない商品が、実は長く売れ続けている」そうだが、

 

今回のインタビュー中に出てきた豊永さんのバイイングしたアイテムは、どれも魅力あふれるものばかり。

 

アフターアワーズを読んでくださっている皆さん、みんな大好きなんじゃないかなぁ。

 

 

 

 

取材・文/早島芳恵  撮影/藤田雄宏

 

 

 

 

―豊永さんがファッションに興味を持ったきっかけから教えていただけますか?

 

豊永 私の父がアイビー世代で、ラルフローレン、VAN、ボートハウスなどに影響されていたんです。そんな父のおさがりを小・中学生のときに着ていたのが、私のファッション遍歴の始まりでした。

 

大磯にヘアサロンIZUWAKIというお店があって、そこのイズワキヘアというスタイルがアメリカのアイビー風なんですね。父は大学生のときに、当時住んでいた大田区から、わざわざそこまで行ってカットしてもらっていたそうです。冬はポンポンのついた正ちゃん帽を被ったりしていました。

 

 

―お洒落なお父様ですね。

 

豊永 高校生になると、横浜・元町に足を踏み入れ、髪を切りに行ったりアメリカントラッドの匂いのするお店に惹かれて買い物をしていました。やはり、私のベースはトラッドにあります。

 

 

―その頃、お父様から譲られたアイテムなど憶えていますか?

 

豊永 中学時代、バスケットボールをやっていて長距離走も得意だったのですが、学校の1500m走のときはUKメイドのニューバランス574を履いて走っていました。オールレザーのネイビーでしたね。でも当時はありがたいものっていう認識はなかったんです。中学生って、凄いスピードで成長するので、すぐ靴がサイズアウトしてしまうんですよね。自分で買うお金もなかったですし、父に何かスニーカーない?って聞いて、その時ちょうどサイズが合ったのがそれだったという感じです。その後、高校時代に焼き肉屋でアルバイトをしていたときも父のこだわりのリーバイスのジーンズを勝手に拝借してオイルまみれにして怒られました。

 

 

―ご自身で服を購入するようになったのは高校生からですか?

 

豊永 そうですね。ただ、その頃はトラッド一辺倒ではなかったんです。結構ミーハーな部分があるので、ストリートをかじったり、パンクっぽいのを取り入れたり。中高時代はバスケットをやっていたので、スポーツテイストが多かったです。

 

 

―その頃はまだファッションにのめり込んではいなかった?

 

豊永 元々オタク気質みたいなものがあまりなくて、ファッションにのめり込むという感じではありませんでした。高校2年生を過ぎて進路を考えていたときに、木村拓哉さんがカリスマ美容師役で出演している『ビューティフルライフ』というドラマがちょうど放送されていたんです。それで、カリスマ美容師になりたいな!って単純に思ったんです(笑)。ただ、昔から緊張すると手にすごく汗をかくんです。それで先生に、手に汗をかく人は美容師になれないよ、って言われて断念しました。それでどうしようかと思案していたところ、愛読していた『ミスター・ハイファッション』に、当時グッチのデザイナーだったトム・フォードが出ていて、それがめちゃくちゃかっこよかったんです。ヘリンボーンのツイードジャケットにジーンズという彼のスタイルは、自分にとって大人を感じさせるセンセーショナルな装いでした。それを見て、こういうファッションっていいなと思い、『ミスター・ハイファッション』を出版していた文化服装学院に入学しました。

 

 

―何科に入学したんですか?

 

豊永 カリスマ美容師ブームと並行して、カリスマスタイリストブームでもあったんです。雑誌も華やかな時代でした。野口 強さんや祐真朋樹 さんといった方々が華々しく活躍されていたんです。そんなキラキラした世界に憧れて、スタイリスト科に入りました。手先も器用ではないのでモノ作りはちょっと無理かな、というのと、スタイリングのほうが合っているかなと思ったんです。

 

 

―その頃は、どんなスタイルだったんですか?

 

豊永 文化服装学院って、日本中からファッションが好きな人が集まってくる学校なんですね。でも私は基本、ジーパン、Tシャツ+1アイテムといった感じの格好でほぼ2年間を過ごしました。周りが自己主張の強いファッションをする人ばかりだったので、自分は逆になるべく飾らずにいたい、と。昔から天邪鬼気質なところがあるんです。だから正直、いわゆるお洒落らしいお洒落はしていなかったですね。周囲と比べたときに、何もしていないほうがクールだ、なんて思っていたんです。

 

卒業後の進路のことは具体的に考えられずにいて、卒業する頃にはスタイリストになるという熱意も薄れてしまっていて。結局、すぐに就職はせず、半年くらいの間、海に行っては日焼けをして、髪を長く伸ばして過ごしていました。終わりのない夏休みのような日々でしたね。

 

 

―憧れのエンドレスサマー(笑)。

 

さすがにそろそろ働かないと、と思いはじめたときに、ちょうどユナイテッドアローズがスタッフを募集をしていたので応募しました。その1年くらい前に雑誌で原宿本店のリニューアルの特集をしていたのを鮮明に憶えていて、面白そうな会社だな、と思っていたんです。それで応募して、ここで腰を据えて働こうと決意しました。2004年のことです。

 

最初は原宿のキャットストリートにあったチェンジズ ユナイテッドアローズに入りました。そこはウィメンズのかなり尖った感覚のお店だったんです。品揃えが好きだったので、学生時代からたまにセールのときに購入していました。

 

 

 

 

 

―他のセレクトショップにも通ったりしていましたか?

 

豊永 ………すいません、学生時代の記憶があまりなくて、細かいところは憶えていないんです。でも、尹さんと犬塚さんがやられていたフェルメリスト ビームスは鮮明に記憶に残っています。10代の頃って、かっこいいと思うものがコロコロ変わりますよね。次の日には違うものがよかったり。明確にこれ、っていうのはそんなになかったんですよね。

 

入ってみると、学生時代に周りにいた人たちとユナイテッドアローズの人たちはまるで違いました。学生時代は自己主張が強い人ばかりで、トラッドよりもデザイナーズが主流でしたが、ユナイテッドアローズの人達には、もちろん年齢的なこともありますけれど、蓄積された重みがあるんですよね。みんなすごく大人だな、と思いましたね。

 

チェンジズ ユナイテッドアローズのスタッフはほぼ30代の女性で、急に大人の世界にポンッと入ってしまったからか、元々痩せていたんですが、入ってからさらに7キロ痩せました(笑)。でも、それまでの常識とかを覆すようなカッコいい人たちに出会えたのは、思い出深いです。当時、ヒールを履いて接客していた男性スタッフがいたんですけど、誰もそれをおかしいとか異質なものとして捉えていない。もちろん、彼も堂々としている。そんな会社の多様性を認める姿勢にも、カルチャーショックを受けましたね。

 

チェンジズ ユナイテッドアローズでは2年勤務して、その後ディストリクトに誘われて異動しました。その頃、半年に1回くらいの頻度でニューヨークに遊びに行っていたんです。ニューヨークにかぶれていて、出たてのトム・ブラウンにハマッて、背伸びをしてバーグドルフ グッドマンでシャツを買ったりしていました。航空券の安い11月や12月に行っていたのですが、クリスマス前のニューヨークは本当にキラキラしていました。

 

ディストリクトは栗野(宏文さん)がディレクターを務めていて、ニューヨークへ遊びに行った話をしていたら、アメリカもいいけれど、メンズファッションのルーツはヨーロッパだから、ヨーロッパにも行ってみたら?と言われたんです。

 

それまでヨーロッパには行ったことがなくて、そこに何があるかも分かっていなかったのですが、そのひと言から、次の海外出張について行っていいですか?とお願いして、半年に1回、自費で栗野の出張に連れていってもらうようになりました。

 

 

―そのときの経験はご自身の糧になりましたか?

 

豊永 いずれバイヤーになりたいな、という意識も芽生え始めていたので、いろいろと勉強になりました。栗野には人とのコミュニケーションの取り方、物の見方、現地でのレストランでの振る舞いやルールなど、本当に様々なことを教わりました。これは自分への投資だな、と思っていましたね。でも、それを抜きにしても、何より楽しかったですし、本当に学びが多かったです。その後、25歳のときにディストリクトのバイイングアシスタントとなりました。店頭に立ちながらバイイングもする、という二足の草鞋でした。休みのない最も忙しい時期でしたけれど、自分で仕入れた服を店頭でお客様に直接販売するという経験は、商売の原点として体感でき、とても勉強になりました。そして、28歳のときにディストリクトのバイヤーと並行してユナイテッドアローズのバイヤーにもなりました。しかも、いきなりドレス担当だったんです。これには驚きましたね。

 

 

―それまでは栗野さんからの影響が大きかったと思うのですが、ドレスのバイヤーになって違う方からも影響を受けたりしましたか?

 

豊永 やはり鴨志田(康人さん)でしょうか。ユナイテッドアローズというと商品面においては栗野と鴨志田、と思われる方も多いと思いますが、その二人からの影響はやはり大きかったです。あとはバイヤーの先輩でもある内山(省治さん)です。内山はしっかりとした信念をもっていて軸のしっかりとした先輩です。それでいてフットワークが非常に軽く、様々なところにアンテナを張り巡らせてバイイングしてくるんです。ソブリンのディレクターをしている太田(裕康さん)のエレガンスや、当時ユナイテッドアローズ&サンズのディレクターだった小木(基史さん)のキャラクターからも影響を受けたと思います。

 

UA以外の方ですと、TUBEの斉藤久夫さんも尊敬する業界の大先輩ですね。仕事もご一緒させていただいていて、いつも手書きのメッセージをくださるんです。

 

 

―豊永さんの装いはいつもシンプルですが、常に洗練されていてとてもカッコいいですよね。どのような点にこだわられているのでしょうか?

 

豊永 色にはこだわっています。例えば、ユナイテッドアローズの商品の下げ札には、色を数字で示している色番をというのがあるのですが、ミディアムブラウンが25で、27はモカブラウン、29はダークブラウンなんです。ただ、26とか28とか、もしくはこの数字に当てはまらないくらいの微妙な色合い、そういうのが好きですね。今日着ているグレーのニットも、正確にはブルーグレーです。

 

ちなみに最近企画してヒットしたスーツは、ブルーグレーのシャークスキンのものでした。グレーともブルーともとれないカラーがネイビーより売れているっていうのは、お客様に微妙なこだわりを本能的に感じ取ってもらえているんだなと感じました。これは嬉しかったです。

 

美は細部に宿る、というように、買い付けをする際は細かい部分も見落とさないように気を付けています。バイイングでも私はそういったベーシックな部分を担当していることが多いので、なるべく多くの方に共感していただけるものを買い付けるようにしています。シンプルだけれどどこかにお洒落心をくすぐるポイントがあるものを選ぶようにしていますね。ただ、シンプルになればなるほど、そのポイントが難しかったりします。

 

例えば、今年の春夏シーズンにサンスペルのパックTシャツを別注したのですが、「ドレスTシャツ」というコンセプトで、パッケージもオリジナルで作って、これがお客様のクローゼットにあったらジャケットのインナーとして重宝するだろうな、来年も着られるだろうな、という思いのもとに作ってもらいました。

 

また、ジョン スメドレーの30ゲージのウールポロシャツを2シーズン連続で別注展開しているのですが、皆さん夏にウールって最初はびっくりされるんです。でも、すごく売れたんですよね。ウール製品はコットンと違ってそんなに色褪せないので、買ったときの雰囲気のまま着続けられるのと、吸湿性に長けているので実はオールシーズン着られるんですよね。今日着ているニットもウール素材ですが、とても気持ちいいです。最近、ウールづいています。

 

 

―ところで今、豊永さんが気になっていることってなんでしょう?

 

豊永 雑誌の『l’étiquette magazine(エチケットマガジン)』が気になっていますね。

 

 

―『エチケット』面白いですよね。今、一番気になっている雑誌です。

 

豊永 フランスへ出張に行った際に見つけたのですが、去年この雑誌のエディターのゴーティエがやっているブランド「ホリディ ボアロ」を買い付けしたんです。彼はいま30代後半くらいだと思いますが、パリの高級住宅街16区出身で育ちがよく、そういった環境で育って今もフレンチトラッドなスタイルでセンスが良い人たちがいるんだっていうのが、衝撃でした。今の時代にこういう雑誌が生まれてくるって、凄いな、と思いますし、でもユナイテッドアローズにも息づくスタイルなんじゃないかなって思うんですよ。

 

ユナイテッドアローズには、パラブーツやチャーチ、ジョン スメドレー、ラベンハムといった、創業時から扱い続けているブランドが多いのですが、彼らもパラブーツとか履いていて、でもスウェットだけは昔とは違う着こなし方をしているんです。そこに“スタイル”があるんですよね。モノはスタンダードでも着こなしが今らしい。時代に合わせてスタイリングしている、今を体現している雑誌ですよね。ゴーティエはもともと演奏家で服畑出身ではないんですよね。ただの洋服オタクだと疲れちゃうんですけど、これくらいのライトな感じだと心地いいんです。

 

ユナイテッドアローズでもこの雑誌を置いています。

 

 

 

 

―心地よいというキーワードが出てきましたが、今、豊永さんが心地よいと思っている物は、どんなものでしょうか?

 

豊永 まずはやっぱりウールなんですよ! 今日着ているものは、全部ウールです。凄い大雨の朝、何を着ていこうと迷ったとき、綿だとビチャビチャで気持ち悪いしな、と思って、ウールなら気持ち悪くないかも、試してみよう って着てみたんですね。そうしたら、やはりウールのパンツだと濡れた後でも、気持ち悪くないんですよね。

 

今日穿いているパンツはサンスペルのものなんですが、これもウールです。サンスペルは元はアンダーウェアのブランドで、このパンツも内側がパイピングを施した下着の始末になっていて、綺麗で気持ちいいんです。ウエストもゴムでラクですし。英国的な血筋を匂わせながら、ちょっとしたリラックス感を出すのが上手いですよね。

 

 

―逆に、ずっと着られている定番アイテムはありますか?

 

豊永 ボタンダウンシャツは、着なくても常にクローゼットにある状態にしています。ブルックス ブラザーズのシャツなんかは、袋に入ったままですけど、置いておきたくて持っています。

 

でも、自分のこだわりがコロコロ変わっていくんですよ。だからずっと着続けているものって、実はあまりないんです(笑)。あと、ブレザーは好きです。スタンダードなアイテムでクローゼットに残っているモノはアメリカ由来のモノが多いですね。そこは父親譲りです。

 

 

―トレンドというものをどのように捉えていますか?

 

豊永 職業柄、外に出て新しいものに出合う機会に恵まれています。今年はこういう色でこういう形が流行るんだな、というのはバイヤーをやっているとある程度自然にわかるんですね。でもそれらをそのまま店頭に並べてお客様に対して、今、コレがトレンドなんです、ってすすめるのは違うんじゃないかなって思うんです。実際に店頭でいただいているお客様の声だったり動向だったりを理解して、お客様の問題解決っていうと大げさですが、こういうモノがあったら気に入ってもらえるかな、と自分自身が感じるものを選んでいますね。トレンドがそのうちのひとつの要素ということはありますが、すべてではありません。

 

 

 

―豊永さんがバイイングした商品で、定番化している商品はありますか? 以前、履かれていたユナイテッドアローズ別注のファルケのホーズがとても素敵で印象に残っているんです。

 

 

豊永 ベルナール ザンスのパンツ、セラードアーのイージーパンツ、チャーチに別注した靴などがあります。最近ではバトナーですね。バトナ―はここ5年ほどで大きくなったブランドですが、こういった真摯に物作りをしているブランドはお客様に選ばれますね。

 

セラードアーも最初は1,2店舗でしか扱っていなかったのですが、今は全店舗で展開しています。イージーパンツにクリースが入っていて、今の時代と感覚がマッチしているのだと思います。

 

ヒットする商品というのは、目線が10cmくらい上。あまり上すぎない、微妙な差があるものなんです。

 

良質なTシャツが欲しいんだけれど何を選べばいいのかわからない、という人に受け入れられたサンスペルのTシャツや、ファルケの素っ気ないほどシンプルなんだけれど、コットンにウールが混紡されたホーズなど、お店の中では正直あまり目立たない商品が、実は長く売れ続けているんです。お客様が気づいてくださるんですよね。

 

あと変わったところではゴールドウィンの機能素材「MXP」を使用したボタンダウンシャツも人気です。元は宇宙飛行士が洗濯できない環境の中で身に付ける下着用に作られた抗菌消臭素材なんです。湿度の高い環境でその機能をビジネスマンにも提供できたら、と思って、ユナイテッドアローズでパターンを起こして作りました。白とブルーの2色をボタンダウンシャツにしたのですが、自分も気持ちいいし、相手も不快にさせない。それに抗菌消臭の圧縮袋をつけて、出張時にも使えるようにしました。

 

 

―豊永さんならではの感性が光るセレクトが買い手にも響いているんですね。

ところで豊永さんがご自身の着こなしで気をつけていることはどんなところでしょう?

 

豊永 無理をしない、ということです。今日はインタビューですし、いつも素敵なビスポークスーツを着ている方々がこの記事をお読みになるでしょうから、ネクタイを締めたほうがいいかな、とかいろいろ考えたんですね。でも、今の自分らしい装いにしよう、と。いろいろと息苦しい今だからこそ、着ていて気持ちのいい、自分らしくいられる格好を築くお手伝いをしたいなと思っています。

 

 

―豊永さんの装いはシンプルな中にも色使いもそうですが、実は身に着けているアイテムそれぞれに変化球があって、つかみどころのないエレガンスがありますよね?

シンプルな中に豊永ワールドを作っている。

 

豊永 そうですね。先ほどもお話ししましたが、中間色が好きなんです。何色って呼べばいいのかわからないような色味が好きです。色もそうですが、テイストも曖昧なものが好きなんです。中庸という言葉がとても好きなんですよね。その間に答えがあるというか、どちらにも属さない感じがいい。柳 宗悦の“今見よ いつ見るも” という言葉がありますが、バイイングをする際は、先入観を捨て、見た瞬間、今そのものを見ることを大切にしています。

 

 

―好きなデザイナーはいらっしゃいますか?

 

豊永 満導さん(高巣満導さん)がとても好きです。リラックスした佇まいで満導さんご自身のスタイルも、手がけているmandoの服も大好きです。アルマーニのような柔らかさがあったり、サンローランのような色気があったり。男性的というより、ちょっと中性的な感じなんですよね。

 

あとは、『男の着こなし』という90年代のNYトラッドの本があるのですが、それにあるようなアラン・フラッサーやジェフリー・バンクスのテイストも好みです。東海岸のトラッドから柔らかい感じになったような。そういった意味では、色気のあるポール・スチュアートも大好きです。

 

 

―今日はお持ちになられたお気に入りのアイテムを見せていただけますか?

 

豊永 mandoのプリントが好きで、中でも特に小紋柄が好きなんです。フレンチシックなテイストですね。どちらも5年くらい前に購入しました。

 

 

 

HOLLAND & HOLLANDのフィールドジャケットです。4年ほど前に購入しました。元スーパーモデルのステラ・テナントがディレクターを務めるようになってから、クリエーションが柔らかくなったんですよね。作りは英国のオーセンティックなものなんですが、配色がモダンで新鮮です。でも、日本で着るにはすごく暑いんですよ。海外出張のときなどに着ています。

 

 

ドリス・ヴァン・ノッテンの型押しクロコのクラッチバッグです。本物じゃないってところがポイントです。本物じゃないがゆえに均一感が出るんですよね。左右対称で。クロコのクラッチって一見凄いですよね。太田(裕康さん)は本物のクロコを持っていると思います(笑)。‘84年の『POPEYE』でフレンチアイビーの特集があって、オックスフォードのボタンダウンシャツの裾を出してリーバイスを穿いて、キャンバスのスリッポンに、クラッチバッグを持っている学生のスナップが載っていて、そのスタイルがとてもカッコよかったんです。そのクラッチバッグがまさにこんな感じだったんです。5年くらい前に自分がバイイングして、手に入れました。

 

 

HOPPERのクラッチバッグです。デニス・ホッパーの娘がデザインしているブランドなんですが、ちょっと常軌を逸している、違う世界を生きている人が作るものだな、かっこいいな、と思って購入しました。凝っていますよね。

 

 

 

中肉のニットはスコットランド製の素朴な感じが好きです。ウィリアム ロッキーの黒のニットはスーパージーロンラムズウールで、1プライでかつ半袖にしたUA別注モデルです。英国的でありながら、ワンプライにしたことで軽さも生まれ、でもイタリアのニットとは違うオーセンティックさがある。半袖ですが、冬に着ています。ジャミーソンズのフェアアイルベストはイギリスで購入しました。Tシャツの上に着たいと思っています。

 

 

 

マッシモ アルバのネイビーのクルーネックニットは、シェットランド風なんですが柔らかくてくつろぎ感が絶妙で好きです。

綺麗なピンクのリアルシェットランドニットは10年くらい前に購入しました。

 

 

 

CHIC & SIMPLEシリーズの本は自分の考え方と合っていて好きで眺めています。

 

 

 

(左から)

カシミアのスリッポンはアンダーソン&シェパードで購入したジョージ クレバリーのウインザーというモデルです。いつ履くんだ、という感じですが(笑)、フランネルのパンツに合わせて軽やかに履けたらいいな、と思っています。

 

ローファーは、LAで購入したオールデンのケープコッドコレクションです。アメリカでしか買えないモデルで、ビーフロールが田舎っぽくて好きなんです。素材はカーフです。

 

外羽根のキャップトウはミラノのリヴォルタのものです。丸くてもエレガントなエッグトウのフォルムが好きです。ヘーゼルナッツカラーもいいんですよね。

 

パラブーツのミカエルフォックのアザラシ。今はもう買えないんですよね。イギリス、アメリカ、イタリア、フランスと脈絡がないですね(笑)。

 

 

―最後に今日着られているものを教えてください。

 

ジャケットはユナイテッドアローズのオリジナルで、3年前のものです。インナーに着ているニットもユナイテッドアローズのオリジナルで、今春夏シーズンのものです。半袖でウール素材です。チーフはアンダーソン & シェパードです。

 

 

 

パンツはサンスペル。

 

 

靴はフェランテ。ピッティが終わったあと、アルノ川を渡ったところにある靴屋で10ユーロくらいのモカシンを買ったんです。それが気に入ってフェランテに持ち込んで、似ている感じのものを作ってもらったモデルです。

 

 

時計はロレックスのデイトジャストです。

 

―どうもありがとうございました!

 

 

 

 

Jacket  United Arrows

 

Knit  United Arrows

 

Pants  SUNSPEL

 

Shoes  FERRANTE

 

Pocket Square   ANDERSON & SHEPPARD

 

Watch  ROLEX

 

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