ビームス安武俊宏×ユナイテッドアローズ渡辺健文

2019.05.01

ユナイテッドアローズ タケ&ビームス トシのプレス対談「流行はどこまで取り入れる?」

 

プレスとして、それぞれのブランドを代表する方々の取材などに日々立ち会っている、ユナイテッドアローズの渡辺健文さんとビームスの安武俊宏さん。
それぞれのショップのいちばんの情報を握っているのは、実はこのおふたりだ。
彼らは何を吸収し、それをどう自分のスタイルに反映させているのか。
影響を受けた人物は? ファッション観は?
対談自体が初めてというおふたりに、ワイン片手にあれこれ語っていただいた。

 

 

― いきなりクイズです。それぞれが今日着ているのはどこの服だかわかりますか?
渡辺さん(以下敬称略) (安武さんのジャケットを見て)これ、スティレ ラティーノでしょう?
安武さん(以下敬称略) お~!
渡辺 これは、インスタで見たことがある(笑)。シャツはさすがにわからないな。
安武 古着のラルフ ローレンです。(渡辺さんのスーツは)カルーゾ?
渡辺 そう。ネクタイもわからない。フィオリオ?
安武 正解! 渡辺さんのネクタイは大剣と小剣の柄が違うんですね。

― ちなみにネクタイブランドではないそうです。
安武 あ、ドリス ヴァン ノッテン! 今季のヴェルナー・パントンのやつですね。

― 先に昼間に個別に取材をしたわけですが(対談の取材は夜)、面白いことにお二人ともシーズンごとのブランドの提案やトレンドをそこまで気にしないとおっしゃっていて、身に着けている今季ものはネクタイだけでした。
安武 トレンドはそんなに気にしないですよね。
渡辺 流行だから着るということはしませんけれど、情報として入ってきますし、自分のワードローブを俯瞰したときに足りないものとして加えたいものがトレンドのもの、ということはあります。
安武 同じですね。バイヤーの取材に立ち会っていて、自然と影響を受けてその中から取り入れていた、ということはあります。

 

 

― 今、バイヤーという言葉が出てきましたが、鴨志田さんや中村さんを始めとするバイヤーの方たちの取材に立ち会っていたりする日々の仕事の中から、ユナイテッドアローズらしさやビームスらしさなどのインスピレーションを得ていたりするのでしょうか?
安武 ユナイテッドアローズらしさ、気になりますね。確かに自分は渡辺さんのような合わせはしないですし。
渡辺 バイヤーなどユナイテッドアローズを発信する人たちが強くこだわりをもっているのは、色合わせ。それはドレスに限らず脈々と受け継がれていると思いますね。以前、鴨志田が、スーツをかっこよく着ている人がカジュアルのときもかっこいいかというと必ずしもそうではなく、逆にカジュアルをかっこよく着られる人は大抵スーツもかっこよく着こなせる、みたいなことを話していました。何故なら、全体のカラーコーディネーションやバランスのとり方、自分に何が似合うのかを見極めるのは、カジュアルのほうが難しいからだと思うんです。スーツはある程度体型補正をしてくれますし、セオリーもあるのでそれに沿って着ればそれなりに見えます。でもカジュアルだとそうはいかない。バイヤーの豊永や内山、鴨志田や重松、栗野など、いつもお洒落に見える人に共通しているのは、色に対する徹底したこだわりをもっていることです。

― 色合わせといえば、渡辺さんの今日のドリス ヴァン ノッテンのネクタイにはすごくやられました。これって、クラシックっていう閉ざされた世界にいると、なかなか生まれない発想で、こういう配色の挟み方ってすごく面白いと思うんです。同時に安武さんも、色の使い方とかアイテムの挟み方が抜群に面白い。ゆったりしたテーパードラインのリーバイスの550とか合わせていたり、ブランドの国籍とかテイストをあまり気にせず取り入れていて、それを上手くまとめているところに抜群のセンスと面白さを感じます。
安武 ありがとうございます。ユナイテッドアローズさんのいちばんのこだわりが色合わせにあるってのいうのはすごく興味深い話です。ビームスに関して言えば、ワークとかミリタリーとかヴィンテージとか、フレンチとかブリティッシュとかアメリカンなどのミックス感というかどのジャンルも好きだという人が多いですね。だから、それぞれが自由に上手く取り入れている。先輩からもミックス感の大切さは昔からよく言われてきました。ドレススタイルの人もカジュアルもスポーツ系も好きという。特に上の年代の人たちはカジュアル畑の人でも結構な確率でファーラン&ハービーでスーツを仕立てていたりしたんですよ。実際、それがすごくかっこいい。

― 確かに。90年代のビームスはそんな感じでしたよね。靴はジョージ クレバリーのビスポーク、みたいな。一方、ユナイテッドアローズの色使いの話でいうと、フレンチっぽいテイストがありますよね。
安武 確かに。華やかなイメージがありますよね。ビームスのドレススタイルはどちらかというと抑制された感じです。ともに上の方たちが築いてきた世界観がきちんと受け継がれているんでしょうね。
渡辺 鴨志田自身はアイビーで育ったと言っていましたが、インスピレーションとしてフレンチアイビーが出てくることも多いですね。このあいだはブリティッシュルーツのものでもフレンチっぽいものが好きと言って白黒の千鳥格子の話をしていました。そういうのがユナイテッドアローズらしさとして認識されているのかなとも思います。
安武 渡辺さんに訊きたかったのですが、トレンドの取り入れ方ってユナイテッドアローズのみなさんはどれくらいのニュアンスで考えているんですか?
渡辺 トレンドはあくまでスパイス的な考え方です。人にはそれぞれに好きなものや変えたくないことがあって、やはりそれぞれの自分らしさがベースにあると思うんです。トレンドを気にしない、という人に無理にそれを押し付けるようなことはしませんし、トレンドで全身を固めるということはないかな。トレンドをどう取り入れると新鮮になるか、という意味ではスパイスとしてですね。

 

― トレンドという言葉を重要視してそれを前面に押し出したスタイルを提案する、というのは雑誌などでもよく見られますが、それでは皆、同じ方向になってしまいます。
渡辺 ウェブページやカタログを作っているときも塩梅としてとても気をつけている部分です。最新のスーツに、最新のシャツとネクタイをして、まったく新しい靴を履くってリアリティがないじゃないですか。どこか1点が新しい、というくらいがリアリティがあって自分たちの身近なものとして捉えやすいし、自分たちのスタイルとしても落ち着くかな、と思います。新しいイコール新品という意味ではなく、全身新しいって嘘じゃない?って思います。
安武 なるほど。逆にビームスでは今シーズンはこれ、という新しいスタイルを見せます。でもその新しいというトレンドの振れ幅がそこまで大きくはない。それでも今シーズンのトレンドはここからここへ移動していますよ、という提案をしっかり見せて、お客様についてきていただきたい、と。ユナイテッドアローズとのスタンスが違う。面白いですね。
渡辺 あとは、どのトレンドを引っ張ってくるのか、というのも大事ですよね。そのへんの見せ方に関しては本当に中村さんって上手いなと思います。とてもわかりやすい。
安武 そうですね。中村のトレンドに対する編集能力というか捉え方は凄いですね。今回の春夏カタログの『MR.BEAMS』のスタイリングは、自分たちのおすすめするトレンドを全身に取り入れています。ただ、その中でのビームスらしさが大切で、それとビームスのドレススタイル自体がそもそもとてもコンサバティブなので、いい塩梅で収まるんでしょうね。
カタログのコーディネートをする時、ベージュのコットンパンツを選ぶだけでもサンプルで20~30本用意しています。生地や色味のちょっとした違いなんですが、このジャケットに合わせるにはこのコットンパンツ、と中村が細かくチェックしています。これだとジャケットが引き立たたないのでこちらのパンツにしようよ、とか。そのあたりは本当に勉強になります。

― ファッションという感覚のものを言葉にしようとすればするほど齟齬が出てくることもあると思いますが。
渡辺 そうですね。イヤですね、コーディネートの解説をするのは(笑)。語れば語るほどかっこ悪いんじゃないか、って。言葉にすると嘘くさくなってくるというか。
安武 何も考えないで着ているんだよ、というほうがかっこいいですよね、本当は。

 

 

― ところでお二人に訊きたいのですが、自社内に自分にとってのファッションヒーローはいますか?
安武 もちろん! 結構います。まずカジュアル部門のトップにいる田辺(カジュアル部統括ディレクターの田辺健一さん)です。自分が入社したときの銀座店の直属の指導者で河村浩三さん(現在はシンガポールのコロニークロージング ディレクター)と同期なんですけど、彼からは服の本当に細かいところまで教えてもらいました。パンツの丈、5mm違うとこんなに印象が変わるんだよ、とか。あと南雲(ビームス創造研究所 クリエイティブ ディレクターの南雲浩二郎さん)はひと目見てかっこいいな、と思いました。あと青野(ビームス創造研究所 クリエイティブ ディレクターの青野賢一さん)ですね。自分が店に立っていた時代のドレス部門のプレスだったんです。スーツスタイルとか本当にかっこいい。あとはプレスのトップの佐藤(PRマネージャーの佐藤尊彦さん)は、手を抜いたスタイルのように見えて、実はすごく決まっている。アートにとても詳しいので、そういう観点から服を見ているんじゃないかなと思うんです。

― 皆さん、とてもカッコいいですけど、南雲さん、カッコよすぎますね。渡辺さんのヒーローは?
渡辺 自分にとってのファッションヒーローは、スーツスタイルですとやっぱり鴨志田です。影響を受けたというのは彼と小木さんしかいません。スーツを着たい、と思うのは鴨志田の存在が大きかったです。鏡で練習してるのかっていうくらい、どんな体勢でも服がきれいに見えるんですよね(笑)。それでいていつも自然体という。
安武 それを言うならウチの西口(ビームスFのディレクター 西口修平さん)は鏡を見て練習しているはず(笑) ピッティの会場に入る前の横断歩道のところで、ピッと緊張モードに入るんですよね、門の前にフォトグラファーが待機しているので。

― ははは、西口さん、やるなぁ(笑)。仕事にも気合が入って、いいじゃないですか!
渡辺 そういえば一時期、雑誌の取材の時に鴨志田笑顔キャンペーンっていうのを勝手にやっていました。選ぶ写真は、笑顔のものばかりにするという(笑)。
安武 鴨志田さんは笑顔のイメージですよね。
渡辺 本来の楽しく身近な存在に見せたいなって。

― 鴨志田さんに関しては、実際にお会いしても、あの笑顔そのままの方ですからね!
渡辺 話が逸れましたが、あとは内山(バイヤーの内山省治さん)の服の着方も好きですね。僕が入社した当時の原宿店のスタッフは本当にかっこよくて、その中の一人なんです。ビューティ&ユースのプレスの大野のカジュアルスタイルも好きですね。服の着方がいいんです。撫で肩で服が似合うんです。
安武 わかります。撫で肩の人は特にドレススタイルが似合う! 中村も撫で肩ですし。西口も結構撫で肩なんですよ。
渡辺 カタログのモデルを選ぶ時のオーディションでは、僕は肩ばっかり見てる。ほかだと六本木に吉田(吉田剛郎さん)というスタッフがいるんですけど、完全に独自路線で好きですね。サーファーで普段カジュアルなんですがスーツスタイルも相当かっこいい。カジュアルもかなり幅をもって着こなしているから、スーツスタイルが面白いんでしょうね。衣装っぽく見えてしまうような唐突さがない。
安武 ドレスを着ている人ってセオリーに縛られがちなところがありますよね。この素材にはこの素材を合わせるとか。
渡辺 もっと自由にファッションを楽しんでいいんだ、っていうのが、カジュアルが上手な人からは伝わってきます。鴨志田なんか、例えば冬のツイードにはリネンシャツのザラッとした素材が相性いいんだよね、といった感じで、そうくるかっていうのが常にがありますから。
安武 ビームスにはない感覚ですね。以前ユナイテッドアローズの中尾さん(メーカー開発担当の中尾浩規さん)がリネンのブルゾンにシャギードッグのセーターの合わせがかっこいいんだよね! と言われたときにすごい納得して衝撃を受けました。でも中尾さんもなかなか表に出てこないですよね。
渡辺 この前、THE RAKEの松尾さんのブログに出てもらいましたが、基本は出ないですね。

― 中尾さんはカッコいいですね。
渡辺 そうそう、ドレススタイルで言えばMDの石原(石原 長さん)もかっこいい。ビームスでは戸田さん(ビームクリエイティブ スーパーバイザー 戸田 慎さん)のスタイルもすごく好きですね。

 

 

― ビームスにもユナイテッドアローズにも知られざるウェルドレッサーがいるというのが、お店の奥深さを感じさせますよね。実はそういった方たちに登場していただくことで、それぞれのショップの知られざる側面、新しい魅力、多面性をより引き出せるんじゃないかなと思っているんです。皆さん、自分というものをしっかりもっているし、そこにすごく興味がある。
渡辺 確かに、皆、自分をもっていますよね。そういった人たちは誰が見てもかっこいいと思います。スタイルがコロコロ変わる人って信じられません(笑)。話は変わりますが、その人らしいといえば、パンツってその人のスタイルが出やすいと思うんです。
安武 わかります。靴は素足で履くとかパンツはノークッションが好きとか、こだわりがある人が多いですよね。

― 今日の安武さんが穿いているリーバイス550のシルエットに、それをすごく感じました。
渡辺 やたらとパンツの丈の設定が変わる人って信用できない(笑)。この前クッションなしだったのに、今日は長いとか。トレンドの要素って下半身から取り入れていくと思うんですよ。でもそれは流れの中での話であって短期間でコロコロ変わるのは浮気っぽいというか。あとパンツを気に入ってもらえたら、リピーターになってもらいやすいというのはよく言われています。下半身で心をつかんだら離れない、という(笑)。
安武 確かに! 上半身に関しては、細いほうがいい人もいれば筋肉質がいい、という人もいる。でも下半身に関しては、全世界共通して脚は長く見えるほうがいい。といえば理にかなっていますよね。
渡辺 地に足がついているという言葉があるように、下半身が安定していると、上がどんなに変わっても自分らしさが損なわれないと思うんです。全身を見られるとき、社外やファッション業界でない方の目線は上から下に移っていくのを感じるけど、社内とか業界の人の目線は下から上にいくことが多い。足元を見られたときに、革靴があまり手入れされていないとなると、きちんとしていないとか信用できない印象を与えてしまう。ミリ単位でパンツの丈や裾幅を決めている先輩を見て、ここまでこだわっている人がいるんだな、と勉強になりました。内山がそうなんですけどね。

― なるほどね。今後、ビームスさんとユナイテッドアローズさんのそういった方たちを交互に紹介していけたら、面白いなって思うんですけど、ご協力お願いできますか?
渡辺・安武 それ、面白いですね。是非やりましょう!

― よろしくお願いします。今日はありがとうございました! はい、ではワイン4本目いきますか!

というわけで、次回からビームス&ユナイテッドアローズの知られざるウェルドレッサーを交互にご紹介していきます。お楽しみに!

 

 

 

United Arrows
Takefumi Watanabe プレス 渡辺健文さん

 

Suit Caruso

 

Shirt Charvet

 

Tie Dries Van Noten

 

Watch IWC

 

Key Chain Chrome Hearts

 

Shoes Baudoin & Lange

 

シェファードチェックのスーツはカルーゾ。
「カルーゾのスーツが今の自分の気分に合っているんです。肩先が丸くてナチュラル。端正でクセが強くなく、いろいろなスタイルに馴染みます。インナーにTシャツを合わせることもあります」

シャツとチーフはシャルベ。
ネクタイは今シーズンのドリス ヴァン ノッテン。デザイナーズもののネクタイをセレクトするあたりはぜひ参考にしたい。
渡辺さん曰く「今日の身につけているものの中で、唯一今シーズン買ったものです」
大剣はオレンジ、ブラウンのストライプで、小剣は同じ配色でサークル模様になっている。

時計はIWC。ブレスレットはティファニー。バングルはクロムハーツ。小指のリングはカルティエのトリニティ、その他のリングはニューヨークのチャイナタウンで購入したもの。
「アクセサリーはほぼ毎日同じものを身につけています。お風呂のときにオニキスのリングを外すくらいです」と、体の一部となっている様子。

キーチェーンはクロムハーツ。クラシックなスーツスタイルにクロムハーツという意外性。でもこれが渡辺さんらしい所以。

 

ボードイン アンド ランジのベルジャンシューズ。クラシックスーツに合わせる足元との選択として、世界的に人気が高い1足。

今日の着こなしのポイントは?
「最近はコテコテに盛るより、すっきりとした着こなしが好きで、コーディネートの色数も抑えめにしています」

実はこの日、渡辺さんに先だって取材に伺ったビームスの安武さんが「渡辺さんはきっと茶系のスーツじゃないですかね?」と言ったほど、渡辺さんといえばブラウン、というイメージが定着している。
「最近は茶系が好きになりましたね。どんな時にも自然体でいたいので、選ぶスーツもナチュラルな雰囲気を大切にしています。こだわっているのがサイジング。僕は手が小さめなので、スーツの袖を長めにとっています。大きく見せる工夫というより隠しちゃう(笑)。そのほうが落ち着くんですよね」

ユナイテッドアローズのプレスという仕事柄、ユナイテッドアローズらしい着こなしを意識していますか?
「ユナイテッドアローズらしさを言葉で表現するのが難しいのですが、皆、色に敏感なんです。鴨志田や豊永の色合わせに対するこだわりを見ていると、ユナイテッドアローズらしいな、と思います。ただ、ユナイテッドアローズらしさ以上に意識するのは自分らしさですね。ユナイテッドアローズって自分らしさの集合体みたいなものですからね。僕が学生だった時代、原宿本店の地下がメンズのフロアで、階段を降りると左手にプラダスポーツやジルサンダー、右にはスーツ、正面にはシャツ、ネクタイと圧巻の品揃えだったんです。ドレススタイルとデザイナーズが混在していて、こんなかっこいい店があるんだ!と衝撃でした。クラシックやデザイナーズなどのジャンルに縛られず、よいと思えるものを選ぶ。それもユナイテッドアローズらしいのかもしれません」

トレンドは意識していますか?

「意識しないようにしているっていうのが正直なところですね。基本的には新しいものが好きなので、お金がいくらあっても足りません。仕事柄、日々情報としても入ってくる中で、自分にとって何が新鮮かということと、自分に似合うかどうかという点でかなり吟味します。今日、身につけているものも今季のものはネクタイくらいです」

学生時代に初めて訪れた原宿本店のかっこよさに衝撃を受け、ここで働きたい! と熱望ラブコールを送ってユナイテッドアローズに入社したという渡辺さん。語り口調は静かだけれど、熱い想いがしっかりと伝わってきて、ファッションというのは心から湧き出るものなんだと改めて実感させられた。

渡辺健文(わたなべ たけふみ)
2002年からアルバイトとして本社勤務。2005年よりユナイテッドアローズ メンズのプレスに。

 

 

 

Beams
Toshihiro Yasutake プレス 安武俊宏さん

 

Jacket Stile Latino

 

Shirt Polo Ralph Lauren

 

Tie Fiorio

 

Belt Piombo

 

Jeans Levi’s “550”

 

Watch Rolex

 

Shoes Allen Edmonds

 

ジャケットはスティレ ラティーノ。生地をご自身で選んでオーダーしたもの。
「ソラーロのような光沢のあるデニム生地なんです。スティレ ラティーノで初めてオーダーしたのがこのジャケットで、せっかくだから季節を問わず長い期間着られて、既製にはないものを、と思ってこの生地にしました」
よく見るとデニム、という個性的なセレクトだ。

シャツは古着で購入したラルフ ローレン。
「イエローって実はいろいろ合わせやすい色なんですよ。最近よく着ています」
ホワイトより肌に馴染みやすく、顔回りを明るくする効果もあり。
ニットタイはフィオリオ。ブラウンとピンクの配色で、独特の編地がアクセントに。

 

ベルトはピオンボ。パンツはリーバイス550。
「おそらく90年代のレディースではないでしょうか。シルエットが気に入って購入しました」
ゆったりめのワタリからのテーパードシルエットで、テーラードとの相性はかなりよさそうだ。
マイナーなモデルだが、これは注目が集まるかもしれない。
アイロンで膝下のみクリースを入れて(膝下のみってのがポイント)穿いている点にも注目。

時計はロレックス オイスターロイヤル。リボンベルトに替えている。
ブレスレットはヴィンテージで、懐中時計のチェーンだったものだそう。小指のシグネットリングもヴィンテージで、もともと別のイニシャルが彫られていたのを消して、自身のイニシャルを入れたというこだわりよう。

「どちらも銀座のOLD&NEWで手に入れました」

 

ビーフロールローファーはアレン・エドモンズ。

 

今日のテーマは?
「ずばりアメトラです。ここ数シーズン、ピッティで訪れるドレイクスのブースの世界観がカッコいいなと思っていて、国籍ミックスのアメトラ、というイメージでまとめました。最近はヴィンテージアイテムを取り入れることが多いですね。新品を身に着けるより、こなれ感を与えてくれて、すぐにしっくり馴染む感じが好きなんです」

ビームスのプレスという仕事柄、ビームスらしい着こなしを意識していますか?
「ビームスらしくあれ、というのは特に意識していないのですが、ビームスでよく言われるのがミックス感という言葉。ビームスの人たちって皆、服が好きなんです。1ジャンルにとらわれず好き。例えばストリート系が好きだけれどドレススタイルも好きだったり。今日の僕のスタイルもイタリアのジャケットにアメリカもののシャツ。僕もミックススタイルが好きなので、そういった意味では自然とビームスらしい、ということになるのかもしれません」

トレンドは意識していますか?
「例えば今日身に着けているアイテムでシャツなど今シーズン購入したものはありますが、全身をまったく新しいもので固めて着る、という事はないですね。毎シーズンたくさんのアイテムを見ている中で、気に入ったものだけを新しく取り入れています。それがいわゆるトレンドと自然と合致している、ということもあると思いますが、意識はしていません」

好きな世界観があり、自分の好きなものを少しずつ集めている安武さん。古着やヴィンテージアイテムを取り入れた着こなしが彼自身のパーソナリティを感じさせ、オリジナリティのあるお洒落で私たち見る人を魅了する。

安武俊宏(やすたけ としひろ)
2005年にビームス入社。銀座店や新宿店でのメンズドレスの販売を経て、2012年よりプレスに。

 

 

写真 藤田雄宏 取材・文 早島芳恵

←TOPへ戻る