Life with Colony Clothing vol.1 Kai Elmer Sotto
2021.09.23
Kai Elmer Sotto<カイ・エルマー・ソット>に見る真のグローバルエレガンス
コロニー クロージングにまつわる魅力あふれる人たちを紹介する連載記事を、
彼らのウェブサイトColony Clothingにて書かせていただくことになった。
第1回は、南米コスタリカより、Kai Elmer Sottoさん。
グローバルなエレガンスを知り、確固たる自身のスタイルをもっている彼に、
コロニー クロージングの魅力を語ってもらった。
あ、その前にまずはコロニー ディレクター、河村浩三さんについて。
原稿/藤田雄宏 写真 /Kai Elmer Sotto
コロニ― クロージング ディレクターの河村浩三氏さん(左)と、カイ・エルマー・ソットさん(右)。ふたりの友人の店、ローマのChez Dedeにて。
カイさんの話に入る前に、河村浩三さんについて
コロニー クロージングのディレクターである河村浩三さんは自分と同じ1975年の生まれで、誕生日は浩三さんがクリスマスで僕がイブ。僅か1日違いということもあり、お互いに妙な親近感をもっているものと勝手に思っている。
ご存知の方も多いと思うが、浩三さんはコロニー クロージングをスタートさせる以前、ビームスで15年以上のキャリアを積んできた。ジョージ クレバリーやファーラン&ハーヴィーといった英国のビスポーク、チャーサレ アットリーニやアンナ マトゥオッツォといったイタリアンクラシックをど真ん中で経験しながらモードやストリートやヴィンテージに明るく、世代的にアメカジも通ってきている。
ビームスという最高の舞台でファッション業界のメインストリームを歩んできたからこそ形成された浩三さんのツイストしたスタイルは、同い年の友人の中でも頭ひとつ抜きんでてユニークである。
そんな浩三さんがシンガポールにセレクトショップ「コロニー クロージング」をオープンさせると聞いたとき、僕は期待に胸を膨らませた。彼はひとつのスタイルに固執せず、面白いと思ったものは自分の感覚を信じて積極的に取り入れていくタイプなので、今までの積み重ねと新しいアイデアをどのようにクロスオーバーさせて店を作るのか、そこにワクワクさせられたのだ。
僕がシンガポールのコロニー クロージングを初めて訪れたのは、ショップがオープンした翌2015年のことだ。都市とリゾートが共存するシンガポールという地に根差したセレクトをしていて、そのふたつが交錯して生まれるエネルギーをモロに感じたのを覚えている。
2015年に浩三さんのお店を訪ねた際に撮った写真。写真/藤田雄宏
2018年に浩三さんの大々的な協力のもと『THE RAKE』でシンガポール特集を組んだ。この頃にはコロニー クロージングは確実にシンガポールのリーディングショップになっていて、彼らが提案する、シンガポールの在住者にリアルに求められている“ジェットセット”と“ラグジュアリーリゾート”というスタイルが、非常に高い支持を得ていることが身に沁みてわかった。
サーフボードがあってTシャツやスイムウエアがあって、その隣にナポリ製スーツがあって、そんなところでサヴィル・ロウの名門中の名門ハンツマンが来店してトランクショーをやっていたり、ジョージ クレバリーのビスポーク受注会をやっていて、加えてオールデンの靴をいつでもオーダーできる店なんて、最高すぎません? そんな店、世界中を見渡してもコロニー クロージングだけである。でも、それがシンガポールではリアルであるのだ。
「自分が知るファッションにアジアの空気をミックスさせ、日本人の感性で表現できたら面白いことになるのではないか、その舞台は多民族国家で世界中から投資家が集まるメルティングポットのシンガポールだろうな、そんな思いがあって、この店を始めたんです」と河村氏。
予感は的中した。ジェットセットとラグジュアリーリゾートを打ち出している同店の客のほとんどは、世界中を飛び回るエグゼクティブたちだ。もちろん、国籍はバラバラである。
当時の僕はTHE RAKE (2018年 Issue22)でこのように書いている。コロニー クロージングは本当にシンガポールに住むさまざまな国籍の人たちから愛されていて、いつの間にかそんな彼らの憩いの場になっており、それが店の活気となって、それはひとつのムーブメントとなって、シンガポール発のシーンを形成している。
今回ご紹介するカイ・エルマー・ソット(Kai Elmer Sotto)さんも、コロニー クロージングを心から愛するひとりだ。FACEBOOKやINSTAGRAMの初期メンバーとして世界的企業への急成長に大きく貢献した彼は、自身のビジネスも成功させ、仕事と遊びで常に世界中を飛び回ってきた。
コロニー クロージングのテーマである“ジェットセット&ラグジュアリーリゾート”を、最も体現している人物といっていいだろう。
カイさんとは自分も2105年に知り合ったが、彼はグローバルなエレガンスを身に着けており、とてもチャーミングで、人を惹きつける魅力に満ちたジェントルマンだ。
コロニー クロージングにまつわる人たちを紹介していく「Style with Colony Clothing」という連載をスタートするにあたって、第1回のゲストとしてカイさんは最高の人選なんじゃないかな。
浩三さんと、カイ・エルマー・ソットさん(右)。
これも2015年に撮った浩三さんとカイさん。アフターアワーズでも扱っているKevin Seahのパーティにて。酔っててピンボケ。写真/藤田雄宏
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Vol.1 Kai Elmer Sotto
訪れる国に合わせて自分のスタイルを楽しむ
真のグローバルエレガンス
Photo by Peter Beavis
仕事と遊び、どちらをしているのかわからないのが理想
カイ・エルマー・ソットさんは1970年に生まれた。フィリピンで生まれ育ったが、両親はともに中国出身だという。
16歳のときにバスケットボールをするために単身でアメリカのミシガンに渡った。その後、17歳で4人の弟たちとカナダに移ったのだが、旅が大好きだったカイさんは、当時から国際的な視野をもって、仕事やプライベートで世界中を旅している自分の未来を常に想像していたという。
トロント大学では経済と英語を学んだ。4人の弟たちを養うために、郵便局やガソリンスタンドでのアルバイトで忙しい日々を送っていたこともあり、大学はパスするのがやっとだったと回想する。その中で未来の自分のありたい姿を思い描いたときに、履歴書をより魅力的なものに見せて企業からの大きな信頼を勝ち得るためにはどうキャリアを積んだらいいかを考えた。そしてそれは銀行であると考え、パートタイマーとして銀行に入り、そこから将来を見据えた自身の仕事をスタートさせた。
カイさんが最初に大きなキャリアを積んだのはeBayだ。インターナショナルチームの一員として2002年からジョインし、上海でも勤務。2007年まで働いた。その後、スタートアップ企業を立ち上げ、それを軌道に乗せて売却した。
そして2008年、まだ400人ほどの規模だったフェイスブックに入社。カナダ支社の立ち上げに参画する。ただ、カナダだけで働く仕事は断り、世界中の人と関われるプロジェクトに携わることを条件に入社をしたといい、カナダでの立ち上げを手がけながら世界中の人たちと一緒に作っていくプロジェクトを担当したという。
「競争社会の中ではとても大切であるスピードを優先し、最初はフェイスブックをアメリカに広めていくことに注力しました。急成長を実現させた段階でアジアに移りたいと伝え、それが認められて上海に拠点を移して働くことになりました。当時の私は携帯電話が社会の繋がりを大きく促進していくものと確信しており、新しいプロジェクトを通してそれをアジアの国々に広げていくことで、裕福な国の利便性に近づけていけるものだと考えていたからです」
フェイスブックで結果を出したカイさんは、当時まだ12名しかいなかったインスタグラムに移る決意をし、拠点を2012年にシンガポールに移す。2014年にインスタグラムに入社し、そこから今日のライフワークにもなっている写真の世界にのめりこんでいったという。
コウゾウさんもケンさんもトモさんも
彼らは“イキガイ”をもって仕事をしている
「哲学的なことになるのですが、私は自分が仕事と遊びのどちらをしているのかわからないような環境にいたかったんです。なぜなら、クリエイティブな発想は遊びの中から生まれてくることがほとんどですし、今も昔もそういうスタイルで仕事をしたほうがよい結果がついてくると信じているからです。eBayでは仕事中にヴィンテージのBMWを購入したり、フェイスブックでは仕事をしながら自分が構築したシステムによって、上海とカナダと日本とヨーロッパの新しい友達と繋がってコミュニケーションを自由に取れて、こんなに楽しいことはないなって。私は常々、今の自分は仕事をしているのか遊んでいるのかよくわからなくなるのですが、でもそれは自分の中で両者の境界が取り払われている証であり、仕事に心底夢中になれていることだと思うんです。私は遊びが大好きで、夢中になって遊ぶ中で生まれる幸せが大好きで、それをずっと仕事でもやってきて、出張でたくさんの国を旅することができました。インスタグラムで働いていたときも、写真もデザインもエディットするのも夢中になって楽しんできたからこそ、なおさらそういう気持ちが強いのだと思います」
カイさんはパッションをもって仕事をしている人たちのことがたまらなく大好きだ。特に、自分の得意なことをビジネスにしている人、それに“イキガイ”をもって仕事をしている人たちのことを非常にリスペクトしているという。
ケンさんこと、ゼネラルマネージャーの佐藤賢介さん。
「例えばコウゾウさんは服が大好きで、大好きなだけでなく服についてたくさんのことを学んできて、その経験を生かしてビジネスにしています。コウゾウさんやケンさん(コロニークロージング ゼネラルマネージャー 佐藤賢介さん)とはよく一緒にサーフィンをするのですが、その際に彼らがどんな服を着ているのか、どんなサーフボードを使っているのかを含めて知ることができるのもとても楽しいですし、彼らも仕事と遊びの間にある趣味のサーフィンからたくさんのインスピレーションを得て、そこから美しいものがどんどん生まれてくるわけです。そうそう、ふたりは早くコスタリカに遊びに来ないとね! たくさんのサーフボードを揃えてありますから」
ヴィンテージを含め、カイさんはラギッドなカジュアルスタイルを好む。
ちなみにカイさんは2015年にインスタグラムを離れ、フィリピンでフィルムを撮ったり、世界中をサーフトリップしながら、しばらくのあいだのんびり過ごしてきたという。そして、そのときに出逢ったビジネスパートナーと“ピープル&カンパニー”を設立した。
「このプロジェクトをスタートして間もなく、知り合いを通じてたくさんのクライアントを抱えている状態になりました。結構な額のチェックをもらって、でも会社の口座はまだ作れていなくて、仕事だけが先に進んでいるような状況でした。このままではまずいということで、4年前にピープル&カンパニーを設立しました。何かを人と一緒にすること、例えば一緒にケンさんと一緒に自転車に乗ったり浩三さんとサーフィンをするのもすごく楽しいことですよね。仲間たちと一緒に何かを作り上げることがとても重要だと感じていたことから、共通の興味をもっている人たちのコミュニテイを構築することをピープル&カンパニーの仕事にしたのです」
コミュニティとは、同じものに興味をもっているという点で共通している人たちが集まったひとつのグループを意味するわけだが、それはいきなり作れるものではないという。
「例えばトモさん(コロニー クロージング クリエイティブ ディレクター 高田朋佳さん)のスタイリングも同じです。彼の素敵なスタイリングはパッと自然に組まれたもののように思えますが、その背景にはたくさんの努力があって、長年の経験の積み重ねから生まれたとても貴重なスタイルです。コミュニティもそれと同じように、いきなり生まれるものではありません。それを構築するには必ず何かしらが必要で、それによってコミュニティは作り上げられるのです」
トモさんこと、クリエイティブ ディレクターの高田朋佳さん。
「ピープル&カンパニーで仕事をしていくなかでよく質問されたのが、どのようにしてさまざまなコミュニティが形成されていくのか、というものでした。それを答えるのが私たちの仕事であり、さまざまなタイプのコミュニティに、どのように、どこで、なぜ作られたかというのをたくさんリサーチしました。クライアントとの仕事で代表的なところでは、ナイキとランニングクラブのコミュニティを作ったり、ポルシェのドライバーズクラブやサーフライダーファンデーションのコミュニティなども構築しました」
カイさんは、自分たちが関わってきたクライアントのリーダーたちがどのような思いでどのようにコミュニティを作って成功したのかをインタビューし、『Get Together』という一冊の本を上梓した。コミュニティの構築方法が辞書のようにわかりやすく書かれているので会社や組織の研修でも使用されており、今もアマゾンのベストセラーとなっている。
Stripe Pressから発刊されている『Get Together』。「カバーも使っている色も紙も写真もすべてが美しくて、これは芸術作品だと思っています」とカイさん。Photo by Bryson Summers
ちなみに、ライター(書き手)のコミュニティ構築の仕事を請け負ったSubstack(サブスタック)社から会社の買収提案があり、1年ほどネゴシエイトした末、つい最近ピープル&カンパニーを売却したという。
※サブスタックは有名なジャーナリストやライター、あるいは素人のライター等関係なしに、記事を読む人を探してくるというプラットフォームを作ったサンフランシスコのテクノロジーカンパニーで、わかりやすく言うと有料のニュースレター配信になるのだが、これが今アメリカでは人気が急上昇中。
訪れたそれぞれの国に大切な友人がいて、
彼らと何かを取り組む中で自分が磨かれていく
先日子供に聞かれたのを機に数えてみて初めて把握したそうだが、カイさんがこれまでに訪れたのは50カ国だという。
「ただ、私にとって訪れた国の数というのはそんなに重要ではありません。その国へ行ったときに何かを一緒に作り上げた人たちといかにして会えるか、あるいはこれから一緒に何かを取り組める人たちと出逢えるか、そこが重要だと思うんです。例えば、イタリアへは年に3~4回訪れていますが、Chez Dedeをはじめさまざまな魅力ある友人たちとコラボレーションしたりする中で、自分の中の芸術的な部分が磨き上げられてきました。一緒に何かを取り組む中で成長し、今の自分が作られてきたわけで、それは私にとってとても大切なことです」
カイさんの親友でもあるローマのChez Dedeのアンドレア・フェロッラさん(左)とダリア・レイナさん(右)夫妻。Chez Dedeは僕も大好きなショップ。
浩三さんも「単に50カ国を訪れたというのではなく、訪れるそれぞれの国に必ず友人がいて、それがすべて仕事や遊びに繋がっている。しっかり深い繋がりがあって、どの国の人たちにもすごくリスペクトされている、そこがカイさんの魅力なんです」と話す。
ファッションはツールで、
コロニー クロージングは私のメンター
さて、ファッションについてカイさんは非常に興味深いことを語っていた。
「服やファッションに関してはツールだと捉えていて、私は常にリスペクトをもってそのツールを選びます。例えば誰かの家に招待されたときは、その人への敬意を表すために、その場にふさわしい服を選んでその人の家を訪れますし、仕事のときは仕事の内容や会う相手のことを一番にどういう格好で行くかを考えます。サーフィンに行くときも同様に、サーフィンに行くツールは何がベストかを考えます。同じようにカンボジアに行ったらカンボジアに適した服装がありますし、ナポリでは美しい仕立てのスーツを着たいです。そのツールを選ぶことで、すなわち自分がそれを身につけることによって、自分自身が心地よくなれて喜びを感じられること、そこが大切だと思っています」
カイさんにとって、コロニークロージングとの出合い、浩三さんや賢介さんとの出会いは非常に大きなものだったそうで、シンガポールでの生活がより豊かなものになったという。Photo by Bailey Richardson
「コロニー クロージングは単なるブティックではありません。ただ美しい服が置いてあるだけの店なら他にもありますが、コウゾウさんとケンさんは私にとってメンズファッションのメンターのような存在です。コロニー クロージングはシンガポールの人たちに“想像力”を与えることをすごく大切にしているように思います。まず彼らはシンガポールの生活の中で、服がどのようなシーンで使えるかを教えてくれましたし、私という人間を知ってもらっていくなかで、私のライフスタイルにより踏み込んで服がどう生活を豊かにしてくれるのか、とても自然なかたちで教えてくれました。彼らに出会うまでは、雑誌で見て気に入ったものから選んで着ていたのですが、二人からは“Less is more(少ないほうが豊かである)”の精神、 ひとつの気に入ったものを大切にしていくことの豊かさを教えてもらいました。私がそうなっていったことで、私の周りの人間も影響を受けはじめて、結果、私の友人たちは服というツールに対してすごく興味をもつようになりました」
コロニークロージングはシンガポールの地で、確実に“服を楽しむ”という文化を広めている。
「シンガポールの人たちはすぐそこにコロニークロージングがあることが、どれだけラッキーなことであるのかに、まだ気が付いていません。東京やミラノやパリは自然とそういった環境が出来上がっていますが、シンガポールにそれと同じかそれ以上に素敵な店があるというのはすごくラッキーなことなのです。私は彼らのことをメンズファッションの大教授、大学を卒業してからPh.D.(博士剛)を取るところの教授だと思っています。だから、私がコロニークロージングで服を買うときは、ツールを買っているという感覚よりも、授業料を払っている感覚に近いかもしれません。買った服は自分の生活の中で長く付き合っていく相棒のような存在となり、そういった経験から吸収していって、私は学べているのです」
Photo by Ivan Kuek
すべてから解き放たれた真のラグジュアリーリゾート
さて、話は変わるが、カイさんは南米コスタリカの人口5000人くらいの小さな町に新しく家を建てたのを機に、ここ半年ほどはコスタリカに住んでサーフィン三昧の生活を送っている。家から海までは徒歩3分だという。
物質的に何か特別な贅沢があるわけではないが、真のゆったりした時間が流れ、そこには人間本来の営みである自然に寄り添った本質的な豊かさがある。
カイさんはこの6カ月のあいだ1度も靴を履いたことがないという。それほど自然に寄り添った生活をしているのだ。服に関してはここでも使えそうなお気に入りのものだけを持ってきたそうで、多くはコロニークロージングで購入したものだという(とはいえ大した数をもってきたわけではない)。
コスタリカのセカンドハウス。リビングの壁は必要ないと思ったので省き、キッチンも大きなものは必要ないと考え、最低限のコンパクトなもの。それが自分にフィットしていて使いやすくて心地がいいという。Photo by Andrés García Lachner
そこにあるのは、ただただ静寂。
コスタリカの海辺で重宝している
コロニー クロージングの服たち
「ここではカモシタ ユナイテッドアローズのパイル地のオープンカラーシャツをとても重宝しています。サーフィンで穿いている水着もコロニークロージングで購入したものですし、コスタリカでは靴も履いてないくらいなので、服はずっと同じものを着ていて、やっぱりコロニークロージングでシャツやTシャツ、ショーツとサンダルくらいしか要らないんですよね。でも、彼らの服は上質でナチュラルで、心地よく、リラックス感にあふれ、ここのフィーリングにもすごく溶け込んでくれるんです」
カモシタ ユナイテッドアローズのシャツが、こんなにも自然なかたちで着られているのだから、鴨志田さん、聞いたら喜ぶだろうな! これがより豊かな究極のラグジュアリーリゾートなのかもしれない。
Photo by Marine Jaud
カイさんはコスタリカに住み始めた今でこそスーツと無縁の生活を送っているが、もちろんスーツを着る機会は多々あり、自身もテーラード好きだ。
「私はラギッドなテーラードスーツ、特にナポリのウールやコットンのスーツを好んで着ています。コロニー クロージングで作った中で特に思い出深いのは、リングヂャケットのダブルブレステッドのタバコカラーのコットンスーツです。もともと私は着れば着るほど味が出てくるヴィンテージのような服が好きなのですが、リングヂャケットのスーツはまさにそんな感じで、シワもいい感じに楽しめますし、使い込んで色が褪せてきた感じも気に入っています。長年履いているオーデンのチャッカブーツと合わせることが多いですね」
イタリアを中心とするヨーロッパのファッショニスタの真似ではなくて、グローバルに通用するスタイルをもっているのも、カイさんの魅力だ。どこの国でもリスペクトされる人格をもち、それにふさわしい着こなしをカイさんは見せている。
20 代のときは30代に、30代のときは40代に、
40代のときは50代に見える服を選ぶようにしてきた
「コロニー クロージングで服を選ぶ際、浩三さんとケンさんの提案はいつも異なっていて、私の“素”の好みはケンさんのスタイルに近いものがあります。でも、コロニー クロージングが素敵なのは、浩三さんは私が着たことないような服を新たに提案してきて挑戦させようとしてくれ、それをケンさんがアレンジして私らしいスタイルに近づけてくれるところにあります。ふたりの提案が上手い具合に合わさって、その中で私はずっと着ていくことを念頭に服を選んでいくわけです。20代のときは30代に見える服、30代のときは40代に見える服、40代のときは50代に見える服を選ぶようにしていて、いつも頭の中に描いている将来の自分がありたい人物像を思い浮かべながら服を選んでいます」
ちなみに、先ほど話に出たリングヂャケットのスーツも、カイさんが最初にコットンのスーツを欲しいと相談し、ケンさんがタバコの色を提案してきて、浩三さんがダブルにしたらどうかと提案してきて、人のアイデアが合わせて作ったものだという。
コロニー クロージングで仕立てたリングヂャケットのコットンスーツ。Photo by Kaila Sotto
「The Sartorialistのスコット・シューマンさんと会ったとき、リングヂャケットのダブルブレステッドのスーツを着ていったのですが、素材、色、仕立ても含めてとても素敵ですごく似合っていると褒めてもらいました。私と彼は身長も含めて体型が似ていることもあり、彼も私と同じスーツを作ろうかなと言っていたくらいです」
さて、写真の話になるが、今回掲載している素敵な写真の多くは、カイさんが撮影したものだ。
「私はいつも何かを目標にして勉強をします。数学が苦手だと思っていたのでコードを書く勉強をしましたし、人生の中で海と関わりがないと思っていたのでサーフィンを始めました。同じように自分は芸術的でないと思っていたので、インスタグラムで働き始めた2014年から写真を撮り始めました。ライカを愛用していますが、カメラも服と同じようにツールと捉えています。写真を撮る際はファインダー越しにその人の内面を覗いているわけですが、目的を達成するために必要だったツールがライカだったわけです。寿司職人の包丁は切れ味だけが大切なのではなく、それを使っていてどういうフィーリングになれるかもとても大切だと思うんです。服も同じで、その服を着ることだけが大事なのではなくて、着てどう感じ、自分の心がどう心地よくいられるかを自分は大切にしたいと思っています。ライカのカメラは見た目も好きですし、それを使っている自分も、出来上がった写真もすべてが大好きです。ライカというツールを選んだ理由は、すなわち使うことに大きな満足を得られるからです」
カイさん、カッコよすぎるじゃないか。
「あ、明日は忙しくて朝の3時半に起きないとけないんです。浩三さん、ケンさん、じゃあね!」
もちろん、忙しいっていうのは、もちろんサーフィンに決まっている。
Photo by Coconut Harry’s
Photo by Bella Sotto
娘たちとともに。Photo by Aaron Zifkin