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2026.06.17

3代にわたって受け継がれる「ダルモ カシミア」

Dalmo Cashmereの名は以前から耳にしていた。Sartoria Corcosの宮平康太郎氏やBrioのGeorge Wang氏が、トスカーナにあるファミリー経営の素晴らしいマリエリア(ニット工房)だと話してくれていたからだ。

 

ほどなくして袖を通す機会に恵まれたが、素晴らしいのは、素材や仕事の丁寧さだけではなかった。それよりも印象に残ったのは、その奥にある控えめな美意識だった。上質なマテリアルは魅力のひとつではあるけれど、彼らのニットに関しては、袖を通した瞬間に伝わってくるあの心地良さにまず触れるべきだと思った。シンプルで、ナチュラルで、リラックス感に満ち、同時に品があって、クラシックな服と自然と響き合う。

 

フィレンツェからローカル線に揺られて45分ほど。ヴェスパで知られるピアッジオの町、ポンテデーラの隣、カルチナイアに工房を構える。かつては石灰窯が並び、陶器づくりも行われてきた、手を動かしてものを作る土地である。Dalmo Cashmereのニットにも、その土地に流れるものづくりの感覚と、家族の中で受け継がれてきた美意識が静かに息づいている。

 

彼らの工房には、これまで何度か足を運んできた。そのたびに印象に残るのは、工房に流れる穏やかな時間である。そこでは、ベテランのマリアイア、つまりニット職人たちが、ス・ミズーラのニットを一枚ずつ編んでいる。

 

創業時から大きく変わっていないであろう、美しい工房の姿がそこにはあった。仕事として一緒に取り組むには、そのブランドに、その人たちに、どこかで恋をしていなければならない。少なくとも私はそう思っている。そして私は、ダル・モンテ家に惚れ込んだ。

 

そんなわけで、AfterhoursではDalmo Cashmereの取り扱いを少量ながらスタートした。では、ダルモ カシミアとはいったいどんなブランドなのか。その背景には何があるのか。創業者の孫娘であり、3代目にあたるクロティルデ・ダル・モンテにインタビューを行った。

 

 

取材・写真 藤田雄宏

 

 

 

1. 会社はどのように現在まで発展してきたのでしょうか。また、創業当初から変わらず残っている価値観とは何ですか?

 

Dalmoは1950年、トスカーナの小さな町カルチナイアで誕生しました。祖父ロランドが、妻の母親によるニット仕事に着想を得て始めたのがきっかけです。創業当初から工房は、細部への徹底したこだわりと卓越したものづくりによって際立っていました。そして短期間のうちに、世界中向けにニット製品を生産する企業へと成長し、著名ブランドの仕事も手掛けるようになりました。2000年代になると、父チェーザレと母パトリツィアは、よりサルトリア的で職人的な方向へ回帰する選択をしました。手作業と、カシミア、シルク、ヴィキューナといった高級素材に重点を置くようになったのです。今日では、私がブランドをより現代的かつ国際的な存在へと導こうとしています。厳選したブティックとの協業や、顧客との直接的な関係を通じて、Dalmo Cashmereは今もなお、長く愛され、それぞれに唯一の物語を宿すオーダーメイドのニットを作り続けています。

 

 

3代目クロティルデ・ダル・モンテの祖父母にあたる、創業者のロランド・ダル・モンテ(右)とサラ・ダル・モンテ(左)。

 

 

2. 三代目としてブランドを率いるようになってから、大きく変えたことは何でしょうか。また、逆に守り続けたいと思ったものは何ですか?

 

私はニットに囲まれて育ちました。放課後、糸やボタンを使って自分なりのカスタマイズをして遊んでいた午後の記憶が、今でも残っています。大学に通いながら会社に入り、ここ10年ほどでブランドをより現代的で国際的な方向へ導こうとしてきました。特にオーダーメイドサービスを強化し、海外の厳選されたブティックとの新たな協業を進めてきました。その一方で、Dalmoを特別な存在にしているもの、つまり職人的な生産、1着ごとにかける時間、素材の質、そして何より人間的で家族的な姿勢は守り続けています。

 

 

 

3. 現在、Dalmo Cashmereの中でご家族はそれぞれどのような役割を担っているのでしょうか。また、家族で働くうえで大切にしていることは何ですか?

 

私たちはそれぞれ異なる役割を担っていますが、とても補完的な関係です。チェーザレは糸や編み地に対して驚くほど鋭い感性を持っています。一方、母パトリツィアは、完成した製品と会社の人間的な側面に常に深い注意を払ってきました。私は主にブランド開発、オーダーメイドサービス、そして海外のショップや顧客との関係を担当しています。また、夫のニコはトランクショーやSNS運営、物流面で私を支えてくれています。近いうちに、正式にチームの一員として加わってくれたらと思っています。

 

家族で働くのは決して簡単なことではありません。しかし最も大切なのは、同じビジョンを共有しながら、お互いの仕事、経験、感性を尊重し続けることだと思っています。

 

左から2代目のチェーザレ、3代目のクロティルデ、チャーザレの妻でクロティルデの母パトリツィア。

 

 

4. あなたの街カルチナイアについて教えてください。どんな場所であり、Dalmo Cashmereにとってどのような意味を持っていますか?

 

カルチナイアは、フィレンツェとピサの間、アルノ川沿いにある小さな町です。都市の大きなリズムから離れた場所であり、それが私たちの仕事の仕方にも大きな影響を与えていると思います。私たちにとってそこは、ルーツであり、歴史であり、手仕事、ゆっくりとした時間、人間関係を大切にする文化そのものです。今では世界中の顧客と仕事をしていますが、自分たちのアイデンティティは、まさにここから生まれていると感じています。

 

 

5. カルチナイアやポンテデーラ周辺には、小さなニット工房や職人たちのネットワークがあったように感じました。以前、家で編み機を使ってニットを作るマンマを見せていただいたことがあり、とても印象的でした。Dalmo Cashmereも、そうした小規模工房や家族労働、分業のネットワークによって成長してきたのでしょうか。また、その働き方は現在どのように変化しましたか?

 

もちろんです。この地域には、ニットに特化した小さな工房や職人、家族たちによる非常に強いネットワークが存在していました。それは信頼、受け継がれた技術、そして非常に人間的な仕事によって成り立っていたシステムでした。私自身も、女性たちが家の中で高い精度と献身を持って編み物をしている姿を見ながら育ちました。現在、その世界は大きく変わっています。多くの工程が工業化され、一部の技術は失われつつあります。それでも私たちは、そうした職人的な知識や、作り手との直接的な関係を守り続けようとしています。

 

 

自宅の一室でニットを編んでいるマンマ。昔と比べて少なくなったというが、いくつかのニットメーカーが存在しているカルチナイアやポンテデーラ周辺には、今も自宅で編み続けているマリアイアが残っている。

 

 

6. Dalmo Cashmereの服を見たり触れたりしたとき、「これはDalmoだ」と感じさせる要素は何でしょうか。ブランドのアイデンティティはどこに宿っていますか?

 

それはまず、服の“手触り”に現れていると思います。柔らかさ、縫製、ボタンからタグに至る細部への注意、編み地のバランス、そして身体を自然に包み込む着心地です。私たちは決して、過剰に作り込まれたものや誇張されたものを目指していません。ラグジュアリーは、細部、糸の品質、そして快適さの中に感じられるべきだと思っています。

 

Dalmoのアイデンティティとは、まさにこの、非常に控えめでありながら徹底的に作り込まれたエレガンスだと思います。

 

 

7. 糸選び、ゲージ、テンション、仕上げの決定。Dalmo Cashmereでは、そうした判断が非常に重要だと感じました。特にチェーザレさんが重要な役割を果たしてきた印象があり、そして今、彼の素晴らしい“目”をあなたが受け継いでいるように感じます。ニットを作る上で、経験や感性、美意識はどれほど重要ですか?

 

非常に重要です。技術はもちろん不可欠ですが、ニットには長年の経験によって培われる、とても感覚的な部分があります。適切な糸、重さ、糸のマイクロン、細部への配慮。そうした選択のすべてが、最終的な仕上がりを大きく変えます。チェーザレからは、この「観察し、触れ、服のバランスを理解する」という姿勢を多く学びました。

 

それは本で学べるものではなく、毎日プロダクトと向き合うことでしか身につかないものです。

 

 

8. 春に東京で一緒に開催した最初のトランクショーでは、カスタマイズの自由度に驚きました。これほど多くの選択肢を提供できるニットブランドは見たことがありません。これはDalmo Cashmereの大きな強みだと思います。なぜそこまで柔軟な対応が可能なのでしょうか?

 

それは、私たちが非常に柔軟な体制と、完全に職人的なアプローチを維持しているからです。工業的な論理で動いていないため、顧客と本当に対話しながら、1着ごとに調整することができます。サイズ、糸、色、ゲージ、そして構造上の細かなディテールにまで手を加えることができます

 

私たちにとってオーダーメイドとは、単なるサービスではありません。それはDalmoを着る人との個人的な関係を築くための方法なのです。

 

ス・ミズーラの細かな要望に応えられるのは、自社工房の中で、一点ずつ編み立てているからである。春に開いたトランクショーでは、あまりに細やかなリクエストに応えていたため、こちらが心配になるほどだった。これまで数々のニットブランドを取材し、その仕事を見てきた。しかし、ここまで自由度の高いオーダーができるニットブランドを、私はDalmo Cashmere以外に知らない。

 

 

9. Dalmo Cashmereは長年、他ブランド向けの生産など、裏方的な仕事をされてきましたよね。そこから自分たちの名前をブランドとして出すようになって、何が変わりましたか?

 

長年、私たちは主に裏方として仕事をしてきました。現在でも他ブランド向けの生産は続けていますし、それは私たちに非常に大きな技術的・品質的経験を与えてくれる重要な学校でもあります。ただ近年、自分たちのアイデンティティ、歴史、そしてものづくりの姿勢を、より積極的に伝えたいという思いが強くなりました。

 

今の顧客は、美しい製品だけでなく、その背後にいる人々、文化、価値観までも知りたいと思っているのです。

 

リネン65%、オーガニックコットン35%を使用したロングスリーブのポロニット。2PLY、12ゲージで編まれており、春夏向けとしては薄すぎず、一枚でも着やすい透けにくい生地感が特徴です。リネン特有の清涼感がありながら、コットンによって肌当たりはやわらかく、素肌の上でも心地よく着用できる。¥91,300 購入はこちらから。

 

 

10. Dalmo Cashmereが70年以上続いている最大の理由は何だと思いますか?

 

それは、時代とともに進化しながらも、自分たちのアイデンティティに忠実であり続けたからだと思います。私たちは流行を過度に追いかけることはせず、常に品質、製品、そして人間関係を中心に据えてきました。人々はそうした“本物らしさ”を感じ取っているのだと思います。そしてそれこそが、Dalmoが今なお歩み続けている理由なのではないでしょうか。

 

 

 

秋には2度目の来日トランクショーを予定している。

前回、お客様には大変満足いただけたので、2回目の来日トランクショーが今から楽しみでならない。

 

 

 

 

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