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2026.07.29
シチリアの評価を変えたプラネタ「シャルドネ」 ‟CHARDONNAY ON FIRE”

私が長く愛してきたプラネタを語るなら、まず紹介したいのが「シャルドネ」だ。
1994年のファーストヴィンテージ以来、この一本はシチリアワインの可能性を世界に示してきた。
そして30回目の収穫を迎えた2024年、その歩みを祝い、島の自然と未来へつなぐプロジェクト「CHARDONNAY ON FIRE」が始まった。
文・藤田雄宏 Yuko Fujita
シチリアの多様性を映す造り手
プラネタは、シチリアワインの近代史を語るうえで欠かせない造り手だ。島で代々農業を営んできた一族を基盤に、現在はメンフィ、ヴィットリア、ノート、エトナ、カーポ・ミラッツォの5地域へと畑を広げ、気候も標高も土壌も異なる土地の個性をワインに映し出している。
シチリア固有のブドウ品種を大切にするいっぽうで、シャルドネやシラーなどの国際品種の栽培にも早くから取り組んできた。品種の原産地よりも、その土地でその品種のどんな個性が引き出せるかを重視しているのだ。ひとつのスタイルを島全体に当てはめず、気候や土壌を見極めながら、土地ごとに品種と造り方を選ぶ。それが、プラネタのワイン造りの基本だ。
オリーブオイルも生産するほか、シチリア南西部のメンフィでは、レストランを備えたワインリゾート「ラ・フォレステリア」を運営している。パレルモにはアパートメントホテル「パラッツォ プラネタ」もあり、ワインや食、滞在、現代アートを通して、シチリアの文化を伝えてきた。
20世紀初頭から1950年代にかけて、シチリアで造られたワインの多くは、色やアルコール、厚みを補うブレンド用として、フランスや北イタリアへ送られていた。戦後もその構造は変わらず、1970年代まで大量生産されたワインの多くがバルクで島外へ出荷された。シチリアは、土地や造り手の個性で選ばれる産地ではなく、安価なワインを大量に供給する土地と見られていたのだ。
長く大量生産の産地と見られてきたシチリアで、品質への評価が大きく変わり始めたのは90年代に入ってからだった。その象徴となった一本が、プラネタの「シャルドネ」である。
熟した黄桃や蜂蜜、マジパンを思わせる豊かな果実味に、樽由来の香ばしさと芯のある酸が重なるプラネタの「シャルドネ」。若いうちは力強く、10年以上の熟成を経るとナッツや蜜蝋、スパイスのニュアンスが現れ、さらに複雑さを増していく。
世界に通じる品種で、島の力を示す
プラネタの「シャルドネ」の始まりは85年。プラネタはシチリア南西部、メンフィから内陸へ入ったアランチョ湖畔のウルモで、シャルドネの栽培を始めた。当時、ネロ・ダーヴォラやグリッロ、カリカンテといったシチリア固有の品種は、現在ほど世界に知られていなかった。
そこで選んだのが、世界中の造り手と飲み手が知るシャルドネだった。よく知られた品種を通して、シチリアの気候と土壌がどのような味わいを生み出すのかを伝える。国際品種に取り組んだのは、この島らしさを薄めるためではなく、シチリアの可能性を世界に理解してもらうための選択だった。
85年の植樹から試行錯誤を重ね、94年にファーストヴィンテージとなるブドウが収穫され、翌95年にリリースされた。96年にはイタリアを代表するワイン評論家ルイジ・ヴェロネッリに紹介され、2000年には『ワイン・スペクテーター』のトップ100に選出。プラネタの名を世界へ広めるとともに、シチリアワインの新たな可能性を示す一本となった。
プラネタの「シャルドネ」が重要なのは、単に国際品種で成功したからではない。世界中の人が知る品種を入口に、まだ十分に知られていなかったシチリアの土地の力を伝えたことに意味がある。まずシャルドネで扉を開き、その先にネロ・ダーヴォラやグリッロ、カリカンテをはじめとする固有品種の魅力を示していったのである。
シチリア南西部、アランチョ湖畔に広がるウルモの畑。1980年代半ば、プラネタはこの地から新たなワイン造りを始めた。
シチリアで重ねたプラネタの記憶
私はこれまで、9回シチリアを訪れている。2019年には、島の南西部に位置するメンフィのワインリゾート「ラ・フォレステリア」に滞在し、ウルモのワイナリーも訪れた。ここは、プラネタの「シャルドネ」が始まった場所だ。また、シチリア東部のエトナでは、北斜面のパッソピッシャーロ近郊に広がるシャラヌオーヴァを訪れ、「エルツィオネ1614」が生まれる畑にも立った。
正月にアグリジェントのリストランテで飲んだ「コメータ」もよく覚えているし、パレルモのサルトリア・クリーミのカルメーロ&マウロ親子と、プラネタのボトルを囲んだこともある。「ラ・セグレタ」は普段の食事に合わせやすい。
アフターアワーズをオープンした際には、購入者へのノベルティとしてプラネタのオリーブオイルを用意してもらい、アレッシオ・プラネタ氏からオープンを祝うビデオメッセージもいただいた。そのくらい、リスペクトしている作り手なのだ。
今回、東京で開かれた記念イベントには、オーナー兼醸造責任者のアレッシオ・プラネタ氏が来日した。プラネタの「シャルドネ」は、シチリアの可能性を世界に伝え、この島のワインに対する見方を変えるうえで、大きな役割を果たしてきた。

夕陽と地中海を望む丘に建つ「ラ・フォレステリア」は、メンフィのブドウ畑とオリーブ畑に囲まれた、プラネタのワインリゾート。ハーブが香る庭園やインフィニティプールを備え、14室の客室には、周囲の自然を身近に感じられるプライベートテラスが設けられている。テラスで味わうのは、土着品種フィアーノから造られる白ワイン「コメータ」。美しい景色と土地の食、ワインをゆっくり楽しむ、シチリアらしい滞在が待っている。
東京で開かれた記念イベントで、300本限定のジェロボアムを手にするオーナー兼醸造責任者のアレッシオ・プラネタ氏。
炎のラベルに込めた二つの意味
その30回目の収穫を祝うプロジェクトが、「CHARDONNAY ON FIRE」だ。
炎の絵文字を光の彫刻として表現した作品「On Fire」が、ボトルのラベルに採用された。手がけたのは、パレルモを拠点に活動するアートコレクティブ、クレール・フォンテーヌ。絵文字が感情を瞬時に伝える現代にあって、ワインは人を同じテーブルに集め、時間をかけて言葉を交わす機会を生む。「On Fire」は、絵文字とワインという性質の異なる二つのコミュニケーションを重ね、人と人が繋がることの価値を表したものでもある。
炎の絵文字には、熱狂やエネルギーを表す明るい意味がある。一方、このラベルには、シチリアを襲う猛暑や乾燥、森林火災への警告も込められた。30回目の収穫を祝う高揚感と、気候変動への危機感。その二つを、ひとつの炎で表しているのだ。
このプロジェクトは、デザインだけで終わらない。
クレール・フォンテーヌとの協働による2024年ヴィンテージのジェロボアム(3000mlのボトル)も、300本限定(日本への入荷は15本)で製作された。その売上金は、シチリア南西部のセリヌンテ考古学公園に「A Long and Magnificent Walk」と名づけられた散策路を整備するために使われる。乾燥や気候変動に強いシチリアの植物を植え、木陰や休憩場所を設ける計画だ。購入者の名前は、その散策路に設置される看板に記されるという。
ワインによって生まれた価値を、再びシチリアの土地へ返す。農業を基盤としながら、食や文化、環境にも関わってきたプラネタらしい取り組みではないか。
2024年ヴィンテージの「シャルドネ」。通常ラベルのほかに、クレール・フォンテーヌの作品「On Fire」をあしらった特別ボトルが用意されている。プラネタファンにとっては、なんとも興味をそそられる仕掛けだ。
日本から始まった世界への一歩
日本は、プラネタの「シャルドネ」ととても深い関係にある。同ワインの最初の輸出先が日本であり、その価値をいち早く見出して紹介したのが日欧商事だった。シチリアワインが現在ほど知られていなかった時代に、プラネタは日本から世界への一歩を踏み出したのだ。
「CHARDONNAY ON FIRE」は、30回目の収穫を祝うだけでなく、炎のラベルを通して気候変動に目を向け、ワインから生まれた利益をシチリアの土地へ還すプロジェクトでもある。過去を祝い、未来へ繋ぐ。その節目を愛するアレッシオ氏とともに日本で祝えたことを、長くプラネタを飲んできたひとりとして嬉しく思う。
提供:日欧商事
お問い合わせ:0120-200105
https://www.jetlc.co.jp/wine/brand/planeta/
