ビームス ハウス 丸の内 サブショップマネージャー 間瀬 裕介氏インタビュー

2023.05.24

次世代を担う注目株! ビームス ハウス 丸の内 間瀬 裕介氏インタビュー

何年か前の話なんだけれど、THE RAKEの仕事でBEAMS Fに撮影商品のリースに行った際、

僕の対応してくれた間瀬さんに対し、物腰がソフトで非常に感じのいい人だという印象をもった。

レジ越しで、時間にして僅か2~3分のことだったけれど、この人相当服が好きなんだろうなって、僕には3秒でわかった。

そういった経緯があって、今回初めて間瀬さんに初めて取材をお願いしたのだけれど、長年の編集者人生で培われた自分の直感を信じてよかった。

イタリアに根付く文化としての“クラシック”とはまた異なる、ファッションとしての“生きたクラシック”。

マッシモ・ピオンボさん本人の装いが大好き、という目線の渋さのもとに成り立つ、

間瀬さんの”いきすぎない” 切り取り方と繋げ方の絶妙な匙加減は、いち編集者として大変興味深いものがあった。

そして何より、自分よりひと回り以上も若い世代からいろいろな気づきをもらえたことが、とても新鮮だった。

ファストファッションが当たり前のさらに若い世代に向けて間瀬さんが話してくれたこの言葉、好きだなぁ。

“ドレスを独立したものとして捉えずにメンズファッションの数あるジャンルの中の1つだと考えると入りやすくなるのではないでしょうか。

ドレスには普通合わせないよねとか、これはドレスには合わないとか、そういった概念を取り払ってしまい、

異なるテイストとのクロスオーバーがあっていいと思うんです。”

これからの時代をリードしていくのは、間違いなく間瀬さんたちの世代なわけだし。(藤田)

 

 

 

 

間瀬 裕介 Yusuke Mase   ビームス ハウス 丸の内 サブショップマネージャー

1990年栃木県生まれ。大学卒業後ビームスに入社し、現在入社10年目。ビームス 銀座に5年半、ビームス 六本木ヒルズに1年、プレス1年半、ビームスF1年勤務を経てビームス ハウス丸の内へ。趣味は古着屋、喫茶店巡り、1990~2000年代初期のドラマ観賞。休日はYou Tube撮影に勤しんでいる。

 

 

取材・文/早島芳恵 撮影/藤田雄宏

 

 

 

 

―ファッションに興味をもったきっかけから教えてください。

 

間瀬さん(以下敬称略) 本格的にファッションに興味をもったのは、私の場合遅くて高校生の時でした。小・中学は水泳やサッカーといったスポーツ三昧でファッションには疎かったんです。ただ、今思い返すと、両親がこんな色が似合うんじゃない?などアドバイスをくれたりしていましたね。

 

高校生の時はファッションに興味はあったのですが、なにせ北関東の田舎に住んでいたので周囲の友人が美容師全盛期のサロン系雑誌を読んでいるのを横目で見ている、という感じでした。

 

そんな折、書店で雑誌『2nd』を初めて手にとり、あ、これ格好いい!と直感的に思ったのがファッションに目覚めたきっかけです。その号は今も手元にあるのですが、ラルフローレンの特集で、圧倒的な格好よさに惹きつけられました。

 

古着屋やリサイクルショップなどに通い始めたのはそこからです。当時のお気に入りのコーディネートは、古着のラルフローレンの白いBDシャツに古着のUS ARMYのベージュのチノパン、足元は古着のデザートブーツでした。アルバイトはしていなかったのでお金がなく、すべて古着で買い揃えていました。それが高校2年生頃だったので、だいぶ遅いほうですよね。

 

大学で東京に出てきて、ストリートスナップ系の雑誌『TUNE』を読んでいる友人と仲良くなり、そこからファッションの路線が変わったんです。ガウンみたいなものを着たり、スカートを穿いたりとか。とにかく目立ってなんぼ、みたいな(笑)。

 

でも、それも1~2年くらいでした。そこからまた元に戻りました。

 

 

―おお、今のスタイルからは想像がつかないですね! 何がきっかけで戻ったんですか?

 

間瀬 単純に似合わないな、と思ったんです。それと都会の洗練されたセンスを身につけた人にはかなわないな、というのもありました。ただ、そんな格好でも街頭スナップされたりしていたんですよ。

 

「ズームイン!!サタデー」にも出たことがあり、その時は原宿のいきすぎたファッションというテーマで取り上げられ、スカートに丈の長い麻のカーディガンを着たエスニック風?のスタイルでした。私の前に出ていたのが、トサカが滅法高い7色モヒカンの人で、あ、この人と私は同じカテゴリーなんだ、と思った記憶があります(笑)。

 

 

―なんと! 間瀬さん、飛ばしてますね~。最高でございます!

 

そんな寄り道をしつつ大学3年生くらいから、再びトラッド路線に戻りました。

 

トラッドといっても様々な国のものがあると思うのですが、やはりアメリカものが好きでした。今でもタグを見ていちばん気分が高揚するのは、メイド イン フランスやイタリーでなく、メイド イン USAなんです。一番自分らしくいられるというか。

 

ちょっと男臭い感じが好きなんですよね。

 

ブルックス ブラザーズ、ラルフ ローレン、リーバイスなどアメリカの定番アイテムを手にとることが多かったです。

 

 

―わかります! 大学生の頃はどこで服を買われていましたか?

 

間瀬 週2回くらい高円寺に通っていました。大学の校門の目の前のバス停に、ちょうど高円寺行きのバスが来るんです。当時は実家から大学に通っていたので、途中の大宮で下車して古着屋にも通っていました。アルバイトがない日は、ほぼ毎日通っていましたね。

 

そんな日々を送っていたのですが、就職活動の時期が来て、いろいろ迷いました。

 

相変わらず古着屋に通っていたのですが、その頃からセレクトショップの店員って格好いいなって思い始めていたんです。

 

きっかけは、ユナイテッドアローズの阿部公一さんという、とても素晴らしい接客をされる方と出会ったことでした。阿部さんは装いだけでなく身のこなしも本当に格好よく、内面の美しさが滲み出ているように感じました。他にも大宮店に素敵な方が在籍されていたので、さして買いもしないのに頻繁に通っていました。大宮にはビームスのカジュアルもあったので、そちらにも通っていましたね。

 

 

―そういう人に出逢えたって幸せなことですよね!

 

就職活動では他業種の会社も受けていましたが、後悔はしたくないと思い、主だったセレクトショップの試験を受けました。運よくいくつかの会社から内定をいただき、内定者を含めて人が温かそうな印象を受けたことと、自分を飾ることなく等身大でいられそうな雰囲気が決め手となって、ビームスに入社しました。

 

ちなみにユナイテッドアローズの木原大輔さんとは就職活動中に知り合い、そこからずっと仲良くしています。

 

 

―おおっ、ビームスとUAの若手のホープどうしがそんな時期に! で、入社してどちらに配属されたんですか?

 

最初に配属されたのはビームス 銀座のドレス部門でした。アメリカントラッドが好きなので最初はビームス プラスを希望していたのですが、いろいろと考えた末、スーツやジャケットを男性らしく着こなすのが格好いいな、と思うようになり、ドレス部門を希望するに至ったんです。

 

 

―入社してカルチャーショックなどありましたか?

 

間瀬 まず銀座の街の都会の空気にカルチャーショックを覚えましたね(笑)。

 

大学も東京で、原宿や高円寺にも通っていたのですが、銀座は別格でした。

 

当時銀座店には、現コロニークロージングの河村浩三さんをはじめ、私の教育担当だった髙田朋佳さん、現在ビームス プラス有楽町のマネージャーを務める鈴木太二、全国のビームスにおいてオーダー受注数トップを誇る渡辺国男、さらにボンビューの大島拓身さんという豪華メンバーで、皆さん格好良すぎて圧倒されました。

 

 

―確かにそれは豪華だ!

 

河村さんの格好よさは本当に圧倒的で、ファーラン&ハーヴィーのビスポークスーツをビシッと着ている日があったかと思えば、次の日はテーラードジャケットにショーツを穿いて足元はヴァンズのスニーカーといった感じで、凄い振り幅でしたね。

 

当時の先輩方は、着こなしの格好よさはもちろん、佇まいが格好よかったんです。好きなものを身にまとっているから等身大でいられるんでしょうね。いい意味でのショックが大きかったです。

 

 

―浩三さん、クールすぎる! 先輩から教わったことで印象的な事はありますか。

 

間瀬 髙田さんにはハンガーの持ち方ひとつをとっても柄の部分を持ったほうがスマートだとか、お金の受け渡しの所作に至るまで、接客業のこだわりを教えていただきました。

 

前述したようにアメリカントラッドが好きだったので、河村さんからはもうちょっとあか抜けたほうがいいな、といったアドバイスをもらいました。

 

そもそもビームスっぽくなかったんですよね、私が(笑)。

 

実はビームスに内定した後、アルバイトを希望したんです。ただ、ビームスでは内定者にアルバイトはさせておらず、人事からそれならば他社でバイトしてみたら? と提案されたんです。いろいろな視野を持てるようになっていいと思う、と。

 

そこでシップスでアルバイトを始めたのですが、店長がイタリアものが大好きな方だったんです。あともう一人、古着屋で働いていたことのあるスタッフがいたのですが、インコテックスのグレートラウザーズにザノーネのニット、その上にミリタリージャケットを羽織って足元はJ.M.ウエストンといった感じで、古着とドレスウェアのミックススタイルがとても格好よかったんです。

 

そこでいろいろ見ているうちに、アメリカもの以外のアイテムも身につけるようになりました。ルイジ ボレッリ、バルバ、ギ ローバー、LBM、マルセルラサンスなどのドレスアイテムを手にしていましたね。

 

 

―間瀬さんが考えるビームスらしさってどんなところでしょう?

 

間瀬 個性が際立っていますよね。ビームスは自己プロデュースに長けている人が多いように思います。ただ、そうじゃない人ももちろんいるわけで、私はどちらかというと長けていないほうだと思うのですが、皆認め合って上手く共存していると思います。

 

 

―他社で格好いいと思う人はいらっしゃいますか?

 

間瀬 栗野宏文さん、鴨志田康人さんが格好いいと思っています。それは高校生の頃から変わらずです。高校時代に手にした『2nd』のラルフ ローレン特集に鴨志田さんが登場されていて、その着こなしの格好よさにめちゃくちゃ惹かれました。

 

栗野さんは言葉ではなかなか表現しづらいのですが、肩肘張らない雰囲気といいますか、妙な抜け感が本当に素敵だなと思います。

 

あとはユナイテッドアローズの豊永譲司さん

 

豊永さんは、私が学生時代、ディストリクト ユナイテッドアローズにいらっしゃって、その頃から憧れていました。今も変わらず格好いいなと思っています。トラッドをベースにしつつモダンで新鮮に感じる着こなし。モノ選びの感覚。どんなアイテムでも着こなしてしまう顔立ちや体格も羨ましいですね(笑)。

 

共にYou Tube動画を発信しているユナイテッドアローズの木原大輔さんとトゥモローランドの川辺圭一郎さんは、自分には持ち合わせていない上品な雰囲気や感度の高さがすごいな、と思っています。洋服だけでなく食やアート、様々なところにまでアンテナが張り巡らされているんですよね。刺激をもらえる2人で、だからこそ一緒にやってみようと思えたんです。

 

 

 

―海外で格好いいと思う方はいらっしゃいますか。

 

間瀬 マッシモ・ピオンボ氏です。2012年当時、キートンと提携してMP di Massimo Piomboのブランドでコレクションを展開していて、その頃にどっぷりとハマり、たくさんのアイテムを買い漁りました。

 

初めて目にしたのは大学生の頃だったのですが、普段生活している中で、あまり目に入ってこないような色味を服に落とし込んでいて衝撃的でした。クラシコでもモードでもない雰囲気があって、クラシックでは禁忌とされているようなアイテムや色の組み合わせも多かったです。まるで絵画を見ているような自由な発想で、それが強烈に格好よく映りました。

 

 

―マッシモ・ピオンボさん、いいですね~。コレクションとは裏腹にご本人はいたって普通の格好をしていて、足元はいつもクラークスのデザートブーツだし、達観している感じがあってすごくカッコいいんですよね。

 

そうなんです! コレクションは華やかな色使いのものが多いのですが、ご本人は本当に普通の格好をされているんです。でも、そこがまた格好いいんです。本当、いつもデザートブーツを履いていたり。

 

私は周囲から、よくデザートブーツを履いているね、と言われるのですが、実はデザートブーツを履くようになったのは、マッシモ・ピオンボ氏の装いがきっかけなんですよ。365日クラークスのデザートブーツを履いている、とある媒体で書かれていたんです。でも他の靴を履いているのを見たことがあるので、さすがに365日ではなかったみたいです(笑)。

 

ちょっと気の抜けたような格好がいいんですよ。ある時、彼がモカシンを履いているのを見て、そのイメージと重なるアトランティックワークスのモカシンを、私も真似てよく履いていました。

 

ご本人の装いとコレクションは全く違うのですが、内に秘めたるパワーを感じるというか、天才だなと思います。

 

彼のコレクションは他ブランドとは一線を画すモノばかりで、随分前に手に入れたものでも今も手放さずに所有しており、最近またクローゼットから引っ張り出してよく着用しています。

 

今回はその中からシルク100%のチェックコートや総柄のシャツ、シルクスカーフ等を持参しました。

 

 

大好きなマッシモ・ピオンボ。「ハンカチは10枚以上所有しています。シルクストールシルクも好きですね。シャツは着丈が短かったりと、今着るには難しいシルエットなのですが、ニットの下に着て襟をちらりと見せたりしています。これは持っているほんの一部で、スーツも5着ほど所有しています。マイクロチェックのスーツやディナージャケットは今でも着ています」

 

 

―服を購入するときに意識していること、コーディネートで意識していることはどんなところでしょう?

 

間瀬 いちばんは色です。抵抗のある色はあまりないように思います。

 

子どもの頃、ピンクが似合うね、と言われたことがあり、ピンクのシャツを着てみたら、いいよね、と周りの人にほめられたんです。あと、当時父がラベンダーカラーのトップスを着ていたような記憶があります。それらはどちらかというと女性が好む色という認識が子どもの頃はあったと思うのですが、男性が着るピンクやパープルというのも昔から好きでしたね。

 

基本的に買い物は、その時の気分を大切にしているのですが、スーツやジャケットに関しては、定番の生地を選ぶことが多いです。定番のアイテムにその時の気分を反映したコーディネートで味付けをしていくスタイルが好きですね。

 

色を入れたスタイルも好きなので矛盾するのですが、一番落ち着くのは今日着ているようなベーシックな色味なんですよね。一番格好いいと思うのも、ネイビースーツやグレースーツに白シャツ、ソリッドタイ、黒靴というコーディネートです。

 

基本的に保守的なので、あまり変わったデザインのものは着ません。デザイナーズものもあまり着ないですね。似合わないし、落ち着かない。ドリス・ヴァン・ノッテンは好きですが、所有しているのはスカーフなど小物ばかりです。

 

常に提案する立場にあるので手に取ったりはしますが、自分のスタイルとは違うものは身につけることはないです。休日は、本当にいつも同じような格好で過ごしています。

 

 

 

―ご自身のスタイルが確立されているということですね。マッシモ・ピオンボ氏のように。

 

間瀬 そこはそうですね。トラッドベースという軸はブレないですし、これからも変わらないと思います。

 

 

 

―ずっと愛用している定番アイテムも多そうですよね。

 

間瀬 今日持ってきているオールデンのタッセルローファーやチャーチのディプロマットは高校時代に雑誌で見て憧れていたもので、大学時代に手に入れました。

 

チノパンは今までに年代の異なるものなど何本も所有してきました。

 

 

ブルックス ブラザーズのBDシャツは、傷んできたら買い替えて、というのを大学時代から繰り返して今も数枚所有しています。リーバイスのピケは60年代のヴィンテージで、恐らくウィメンズのモデルです。519も持っていますが、トップがスナップボタンで股上が深く、強いテーパードシルエットのこちらが一番気に入っています。

 

 

あとはフィルソンやペンドルトン、マクレガーのオープンカラーシャツ、ドリズラーなどもあります。アメリカの代表的なブランドばかりですね。

 

ニットはシェットランドが好きで、サックスブルーやヴィンテージの黒のミドルゲージのものをよく着ています。ジョン スメドレーはタートルネックからポロニット、ウール、コットンと沢山所有していて、主に仕事の際に着ています。

 

スニーカーは、USA製のコンバースの黒のオールスターのハイカット、アディダスのタバコやニューバランスを履いています。昔からモカシンが好きで、ユケテンは定番アイテムです。クラークスのワラビー、ナタリー、デザートブーツも欠かせません。

 

他にもレノマのブレザーやシャルベのシャツ、グッチのビットローファーなど、いわゆる “定番モノ” といわれる様々なアイテムがありますが、根本としては今日持ってきたような “USAモノ” が好きです。

 

 

 

―そういったものはアップデートしないで身につけますか? それとも時代のニュアンスを入れて身に付けますか?

 

間瀬 時代のニュアンスを入れますね。懐古主義に陥らないよう、今っぽさを小物や色で取り入れています。トータルコーディネートの中で定番アイテムは2~3点くらいですかね。例えばローデンコートに色柄の綺麗なアイテムを入れたり、マフラーを今っぽいものにしたり。グローブで色を足してみたり。

 

 

 

―そこがコツなんですね! これは結構ためになる話だと思います。間瀬さんはクラシックとはどういったものとして捉えていますか?

 

間瀬 難しいですね。もう少しキャリアを積んでからでないと答えられないですし、答えによっては怒られそうです(笑)

 

クラシックというのはアイテムに対して使うのか、スタイルに対して使うのかで変わってくると思うんです。

 

アイテムに対してだと変わらないものも多いと思いますが、私はクラシックアイテムのマニアやコレクターではなくあくまでも人の装いとして捉えているので、そう考えると変わっていっているものですよね。時代に応じて変化していくものだと思います。

 

その中で自分としては、さりげなくプラスする装いが最近の流れのように感じます。それはアイテム選びだったり、アイテム同志の組み合わせ、色合わせだったり。そうしたプラスアルファでクラシックをアップデートさせています。

 

 

 

―間瀬さんは普遍的なアイテムをたくさん所有されていますが、オーダーはお好きですか?

 

間瀬 大好きです。今日はサルトリア ダルクオーレのヘリンボーンのスリーピースを持ってきたのですが、ダルクオーレでオーダーすることが多いですね。今も2着仕上がり待ちです。

 

今日着ているのは、カスタムテーラー ビームスのリングヂャケット製のオーダースーツです。

 

少し前には大島ビスポークでリネンスーツを作りました。とても丁寧な作りに目を見張りました。

 

 

 

―間瀬さんにとってサルトリアルヒーローは?

 

間瀬 ルイジ・ダルクオーレ氏ですね。

 

今日、持参した2着もご存命の時に購入したものです。

 

毎シーズン、ビームス ハウス 丸の内でダルクオーレのオーダー会を催しているのですが、お亡くなりになってからは初となるオーダー会が行われました。新生ダルクオーレも非常に楽しみで応援したいです。

 

ダルクオーレは、時代や着る人のニーズに柔軟に対応してくれるところが魅力のひとつだと思います。

 

ハウススタイルがある中でも、そういった柔軟性のある姿勢やキャパシティの広さ、懐の深さが格好いいなと思います。

 

私は服を着るときに着こなしだけではなく内面的なものの表現を意識しているのですが、それを感じさせてくれるのがダルクオーレを好きな理由です。

 

 

 

―間瀬さんは海外にもいらっしゃってますか? オーダーは海外でもされています?

 

間瀬 六本木ヒルズ店勤務の時に出張でフィレンツェ、ミラノに行きました。

 

その後、旅行でロンドン、パリに訪れ、憧れだったシャルベやアンダーソン&シェパード、ノーザンプトンにある各シューメーカーのファクトリー、ヘンリープールでは職人の方々の縫製現場などにも行きました。パリの蚤の市も楽しかったですね。

 

シャルベのストライプシャツはその際にオーダーしたものです。ネクタイもバックヤードからいろいろ出してきてくれて、日本のショップではあまり見ないプリントタイやボウタイを7~8本買いました。そこで買い物し過ぎて、その後に訪れたアンダーソン&シェパードでは大きな買い物が出来なかったのも思い出です(笑)。

 

蚤の市ではトランク2,3個分に山積みになっていたポケットスクエアを40枚ほど購入しました。1枚1ユーロだったのを40枚30ユーロにしてもらって(笑)。柔らかい雰囲気のものが多くて気に入って使っています。

 

 

 

―間瀬さんはショップの垣根を越えた取り組みもされていますが、そこから生まれたことや手応えはありますか?

 

間瀬 ユナイテッドアローズの木原大輔さん、トゥモローランドの川辺圭一郎さんとYouTubeをやっています。木原さんがとにかくマメなんですよ! スケジューリングや細やかな連絡は木原さんしか出来ない。マメだからモテるんですよ。私の誕生日にLINEでスタバのチケットを送ってきてくれたり。私なんて木原さんの誕生日、覚えていませんし(笑)。本当に真逆の性格なんですが、だから相性がよいのかもしれませんね。川辺さんはいつも素敵なのですが、でも少しヌケているところもあって、そこがよいんですよね。

 

3人で気ままにやっているので、先々の展望などはあまりないのですが(笑)。

 

ちょっと話が逸れますが、現在ビームスでは「B印マーケット」といって、各キュレーターがモノだけでなく、コトも含めたライフスタイルすべてにおいて、キュレーションしたものをご紹介しています。この度私も担当することとなり、現在準備を進めています。通常のビームスFやブリッラ ペル イル グストのレーベルでは取り扱っていないような“モノ”を私のフィルターを通して仕入れ、それらをオンラインショップにて展開する予定です。

 

規模は小さいですけれども、そういったことが出来るのは楽しいです。

 

 

 

―おお、それは楽しみです。ところで間瀬さんの服を選びは、長く着られることが前提にありますか?

 

間瀬 そうですね。アイテムによりますけれども、スーツやジャケットに関しては長く着られるよう定番的な生地を選びます。

 

靴下、ハンカチ、ベルト、マフラーなどは、その時気に入った色柄があれば一旦コーディネートなど考えず手にしていますね。相当な数を持っています。私はアクセサリー類を身につけないので、そういった小物で着こなしに変化をつけたりエッセンスを加えています。

 

 

 

―ファストファッションが主流の若い世代にクラシックな服を長く着ることのすばらしさを伝えることも、間瀬さんたちの、そして我々の使命なのかなと思うのですが、いかがでしょう?

 

間瀬 使命ですね。今、20代の間でクラシックファッションが好きな人が増えているんですよ。

 

元々SNSが苦手でやっていなかったのですが、少し前からインスタグラムでコーディネートの紹介を始めたんです。自分のファッションをひけらかすのは嫌いで、完全に時代遅れなんですが(笑)。ちなみに電子マネーも全く使っていません。使っていないというより苦手で使えないんです。。。

 

モノを売りたいから始めたのではなく、若い世代に何かを伝えたいという気持ちだったんです。まずはドレスって楽しいよね、といった共感を得ることからかな、と。

You Tubeを始めるきっかけとなったのも、そういったことからです。

 

以前だったら雑誌などの紙媒体に登場した諸先輩方から感じ取ったり、学んだりしていたと思うのですが、今はツールが変わってSNSになった。インスタグラムを見てショップに来てくださった方や、例えばトゥモローランドの川辺さんのお客様だった方がYou Tubeを見てビームスに来てくださったり、またその逆もあったり。

 

ドレスって難しいとか思わずに、ドレスって楽しいな、格好いいなと思ってくれる人が1人でも増えたら嬉しいですね。

 

私でよろしければSNSを介して何でもお答えしますし、様々な考え方を聞いたりして、一方的なドッジボールではなくキャッチボールが出来れば、と思っています。

 

ドレスを独立したものとして捉えずにメンズファッションの数あるジャンルの中の1つだと考えると入りやすくなるのではないでしょうか。ドレスには普通合わせないよねとか、これはドレスには合わないとか、そういった概念を取り払ってしまい、異なるテイストとのクロスオーバーがあっていいと思うんです。もちろん、そこにはディテールでの相性という点はあるでしょうけれど、今後はそういった流れになっていき、そうなるともっと楽しめるのではないかな、と思っています。

 

 

―なるほど、素晴らしい!

 

私は今でも学生時代と変わらずその日に何を着ていくかじっくり考えますし、いつもと違う格好してみたいとか、今日はいいコーディネートが出来たなとか、装うことが常に楽しく、そこは変わりません。仕事着だなんて一度も思ったことはありません。

 

私は雨の日なら雨の日に合う格好をして出勤し、一日そのまま過ごします。暑い日ならなるべく涼しく見える格好で、でも格好つけたいからジャケットは着たい。それならばせめて素材はリネンにしよう、など。お店に着いて着替えて店頭に立つということはしません。もちろん、着替えることを否定しているわけではありません。接客業、サービス業としてのマインドという点で、着替えるのも1つの方法だと思いますので。ですが、私自身はリアリティのあるコーディネートを大切にしていて、そこから気づくことがたくさんあると思っています。

 

例えば、雨の日にこの靴を履いたらアフターケアがとても大変だ、どういうケアをするのか、とか実際に身につけていないとわからないことってありますよね。実際にそういった経験をすることも、何かを伝えていく上では大切なのかな、と。

 

幼い頃からあまり近道というものが好きではなく、まわり道をしないと見えない景色があるなと常々思っています。

 

 

最後に今日持ってきていただいたお気に入りの私物とコーディネートを教えてください。

 

ダッフルコートはエルメスのヴィンテージ。グレイッシュなブルーが気に入っています。オフシーンだけでなく、時にはスーツの上から羽織っています。

 

 

シュナイダーのローデンコート。ローデンコートは男性が持っておくべきコートのひとつだと思っています。抵抗のある方も多いと思いますが(笑)。スーツやジャケットにはもちろん、休日はニットにシルクスカーフを巻いて、このコートを羽織っています。

 

 

大好きなマッシモ・ピオンボのチェックのコートは、入社1年目に購入。素材はシルク100%で、春先や秋口にサッと羽織っています。

 

 

どちらもダルクオーレです。ヘリンボーンの3ピースはス ミズーラで、生地はホーランド&シェリー。目付500g/m以上もあるツイード生地ですので暑過ぎますね(笑)。ネイビーの生地はドーメルのスポーテックス ヴィンテージ。既製ですが、体型によく合い、ショルダーやラペルの雰囲気も気に入っています。

 

 

ブルー系のシャツはたくさん所有しています。右からシャルベ、ターンブル&アッサー、ボリエッロでオーダーしたもの。

 

 

カラーシャツは、色柄もいろいろ揃えています。右からマスタードイエローのものはシャルベ、パープルはインディビジュアライズドシャツ、ベージュはラグビーで、タブカラーが好きなのでレギュラーをタブカラーに変えました。ブラウンはルイジ ボレッリ。

 

 

シャルベの白×パープルのスカーフとフラテッリルイジのドットスカーフは、ニットを着たときに巻きます。ポケットスクエアはシモノ ゴダールや前述のパリの蚤の市で手に入れたもの。

 

 

コートにももちろん合わせますが、ジャケットやスーツに巻き物とグローブ、というスタイルが好きです。マフラーも結構な数量を所有しています。最近お気に入りのマフラーはアリアンナの千鳥格子、ベグのドット、スコットランド製のヴィンテージのボーダー。

 

 

スーツもそうですが、タイもやっぱりネイビーやダーク系を身に付けていると落ち着きます(笑) これらは定番的アイテムです。

お気に入りは右からアット ヴァンヌッチのニットタイ、フォサッティのソリッドタイ、ブルックスブラザーズの80年代のもの、アーディ&シーのレジメンタルタイはホーランド&シェリーの生地を使っています。バティストーニのネイビーにシルバーとピンク。ネイビーのストライプタイはやっぱり好きですね。

 

 

今よく使っているタイを持ってきました。右からシャルベのニットタイとシャルベのプリントタイ。この2本はコーディネートに軽さを出したいにときに。グレーにピンクやブルーのストライプもシャルベ。その左の2本はフィオリオ。ヴィンテージのウールツイードはアクセント作りに重宝しています。

 

 

グローブ、チーフともに大好きなアンダーソン&シェパードのものです。

 

 

ラベンダーカラーはドゥーニー&バーク、オレンジはレグロン。きれいな色味のベルトはアクセサリー感覚で使っています。

 

 

服は定番アイテムが多いのでm変化をつけたいときにボーダーの靴下を投入します。グリーンはコーギー、オレンジはアルト。パープル×ブルーのリヴェラーノ&リヴェラーノのホーズはイタリア出張の際に購入しました。

 

 

右からオールデンのタッセルローファーは学生時代に手に入れたものです。オールデンは一番好きなブランドで、他にもスエードのタッセルローファー、キャップトウ、プレーントウなどを所有しています。アトランティックワークス(中)やユケテン(右)のデッキシューズはスニーカー感覚で履いています。

 

 

右はチャーチのディプロマットで、カジュアルに、またはコットンやフランネルなど素材感のあるスーツやジャケットなどに合わせています。左はエンツォ ボナフェでオーダーしました。

 

 

ともにアンダーソン&シェパード。右のベルベットのスリッポンはジョージクレバリー製です。履く頻度は決して高くないですが、スーツに合わせています。左はベルベットのエスパドリーユ。華やかなスリッポンはコーディネートのハズシに。

 

今日のスーツはカスタムテーラー ビームスのオーダーです。生地はフォックス ブラザーズのフランネルで3年程前に誂えました。

 

 

 

シャツはシャルベ。シャルベのブルーは独特ですよね。タイはアット ヴァンヌッチのチャコールグレー。ウール素材です。

 

 

時計はオーデマ ピゲ。70年代のものです。ベルトはグレーのクロコダイル。柔らかい印象で合わせやすいのがポイントです。

 

 

 

靴はチャーチで昔のラストですね。全体的に季節感を重視したコーディネートで、背伸びしていない、落ち着くスタイルでまとめました。

 

 

―ありがとうございました!

 

 

Suit Custom Tailor BEAMS

 

 

Shirt Charvet

 

 

Tie Atto Vannucci

 

 

Pocket Square  Simonnot Godard

 

 

Shoes Church’s

 

 

Watch  Audemars Piguet

 

 

 

 

 

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