ユナイテッドアローズ セールスマスター 木原大輔氏インタビュー

2022.10.03

最注目の30代ウェルドレッサー ユナイテッドアローズ 木原大輔氏インタビュー

20~40代のファッションに携わっている人たちの中で個人的に最もセンスの良さを感じるのは、ユナイテッドアローズの木原大輔さんです。

なんていうか、装いがクリーンで、色使いが絶妙で、常に本人の美意識が感じられて、それが決して頑張りすぎてない、そんなところが大好きです。

ってなわけで、今回は珍しくこちらから人選のリクエストをして、木原さんをご紹介します。木原さん、今から注目していたほうがいいですよ~!

ところで、インスタであげているレストランもすこぶる感度が高いんだよなぁ(ボクが好んで通っている中華屋とは対極だ、、、)!

 

 

取材・文/早島芳恵   撮影/藤田雄宏

 

 

木原大輔 Daisuke Kihara

1990年生まれ、東京都出身。2013年、ユナイテッドアローズに入社。日本橋店勤務後、六本木ヒルズ店に移り現在に至る。2019年、販売のスペシャリストに与えられるセールスマスターに認定される。近年は商品企画にも携わっている。

 

 

 

―ファッションに興味を持ったきっかけから教えてください。

 

木原 母が洋服好きで、幼少時からいろいろと着せられていました。幼稚園、小学生の頃から同級生や友人のお母さん方からお洒落だよね、と褒められることが多く、自然と服装を意識するようになりました。

 

 

―その頃はどんな格好だったか覚えていますか?

 

木原 ジャケットやブルゾンを着ていました。子どもに服を着させるのって大変ですから、一般的には1枚でサマになるような格好をさせると思うんです。周りの子がラクチンなスポーツウェアなどを着ているなか、自分は襟付きのシャツやブルゾンなど、きちんと重ね着をさせられていました。そういったなかで自然と服が好きになっていき、小学5年生の頃には自分で服を買いに行くようになっていました。

 

 

―小学生の男の子がひとりで服を買いに行くって、凄いですね。

 

木原 地元の小岩には古着屋が何軒かあったのですが、その中に服についていろいろ教えてくれる店がありました。

What’z upという原宿にもある古着屋が小岩にあって、そこのお兄さんに上野にはこういうお店があるよ、原宿ならここに行くといいよ、と教えてもらったりして、中学生の頃には地元からも離れてひとりで買い物に出かけるようになりました。子どもの頃から親や友人と東京ドームや神宮球場に野球を観に行ったり、自分の野球の試合や遠征でも電車に乗って出かけていたりしたこともあり、ひとりで電車に乗って出かけることには抵抗がなく、あちこちに行っていましたね。とはいえ、小学校から大学までずっと野球をやっていて、プライオリティはそっちにあったので、当時はそこまでたくさんの服を買い漁っていたというわけではなかったです。

 

 

―野球を大学まで続けていらっしゃったんですか?

 

木原 はい。小学生の時は地元の少年野球チーム、中学生では部活ではなく硬式野球のボーイズリーグのクラブチームでやっていて、高校は野球推薦もいただきました。大学では当初野球をやるつもりはなかったのですが、友人に誘われて軟式野球部に入部して、インカレまであと一歩のところまでいきました。

 

 

―中学生の頃は古着やアメカジといった格好が多かったのでしょうか?

 

木原 シャツやジャケットなど、トラッドな服が好きだったので、ラルフ ローレンなどを着つつ、雑食でほかにもいろいろ着ていました。幼少時から英会話教室に通っていたので、ハロウィンなどのイベントがあったりしましたし、海外のカルチャーを割と身近に感じていました。そんなわけで、アメカジも含め海外のファッションも身近だったんですが、髪型は高校までボウズでした(笑)。

 

 

―そんな木原少年が、初めて夢中になったブランドは何ですか?

 

木原 リーバイスです。小学6年生の頃から穿いていました。古着の501だったかと思います。

 

 

―小学生で古着のリーバイス!

 

木原 1万円を持って「格好いいのが欲しい」と古着屋のお兄さんに相談したところ、赤耳が良いよ、と薦めてもらいました。そして薦められるがままに、きれいに色落ちした501を買いました。小学生なので赤耳も色落ちもよくわかっていませんでしたが、本物感、雰囲気にビビッときたのは憶えています。気に入って穿いていると祖母からは新しいものを買ってもらえないのかと心配されましたが(笑)。

 

 

―ははは(笑)。

 

当時はアルバイトもしていませんから、お年玉とお小遣いで気に入ったものを買っていました。子どもが買える範囲の中で、古着のリーバイス、ラルフ ローレンなどを選んでいましたね。

 

もちろんそれだけではなくて、小学生の頃は親が買ってきた服も着ていました。でも買ってきた服の色が好みでなかったりすると、交換してきてもらったりと、子どもの頃から色に対するこだわりは強かったです。あと、みんなと同じ格好というのも嫌でした。だから古着とか着ていたんだと思います。

 

中学生になると、友人が裏原宿やストリート、サーファーみたいな格好をし始めて、一緒に買い物に行った際にそういったテイストのものも少しかじってみました。ただ、実際に着てみて、自分らしいのはやはりオーセンティックなものかな、と気が付きました。

 

 

―その頃の情報源はどこからだったのでしょうか?

 

木原 中高生までは周りの人が情報源でした。高校生になると、クラスメイトと一緒にファッション雑誌も見ていましたね。大学生の頃はよく原宿や表参道に入り浸っていて、洋服屋さんや美容師さんが情報源でした。友人と一緒にそのあたりによくいたので、たまに雑誌のスナップにも出ていました。

 

また、アルバイトを始めたのを機に、デザイナーズの服を取り入れるようになりました。マルタン マルジェラ、ジル サンダー、アクネ、トム ブラウンあたりを買うようになって、トラッドやオーセンティックさを感じさせるデザイナーズアイテムを古着とミックスしてコーディネートしていましたね。

 

19歳の時にカナダのバンクーバーに3カ月ほど語学留学をしたんですけど、そこでは日中は勉強をして、自由時間になるとよく洋服を漁りに行ってました。古着屋やアパレルショップへも行きましたが、向こうはスリフトショップが多く、宝探し感覚でよく楽しんでいました。現地の人は体が大きいので、小さいサイズが残っていて、しかも安いんですよね。リーバイスのサードや501ビッグEでも1万円しないくらいで転がっていましたし、赤耳も3千円くらいで見つけたこともありました。あとはカナダならではのカウチンセーターや、アークテリクスなども買いましたね。

 

 

―そんなに昔の話ではないのにビッグEが1万円しないなんて、そりゃ毎日でも宝探ししたくなりますね!

 

木原 その留学中に、週末を使って弾丸でロサンゼルス在住の友人宅へ遊びにいったんです。L.A.ってデザイナーズの一流ブランドもあれば古着もあって、そのミックス感が面白いんですよね。そこでバーニーズ ニューヨークを訪れたら、アレキサンダー・マックイーンなどデザイナーズブランドもありつつドレスウェアもあって、すごいなって感動したんです。何か買いたくなっていろいろ物色し、マルジェラのカーディガンはすぐ決まったんですが、ほかにもアメリカらしいものが欲しくて探していたんです。そうしたらショップスタッフが話しかけてきてくれて、フィルソンのトートバッグを手にしながら、これは僕が買い付けたものなんだよ、って薦められました。

 

それがバイヤーから直接商品の魅力を聞く、という初めての体験だったんです。

 

フィルソンのバッグは当初欲しかったものではなかったのですが、話を聞いて、アメリカっぽいアイテムだし古着にも合うし、いいなと思って購入しました。このときの体験が将来的にファッション業界で働きたいと思う原点になりました。セレクトショップやスペシャリティストアという編集型の店を強く意識しはじめ、そういった店に惹かれ始めるようになったんです。その時まで日本のバーニーズ ニューヨークでショッピングをしたことはなかったですし、ユナイテッドアローズも覗いたことはあるけれど、、、という程度でした。

 

大学時代も野球を続けていたのですが、就職活動の際に好きなことを仕事にしたいと思い、ファッション業界を目指してセレクトショップだけを4社受けました。

 

 

―その中でユナイテッドアローズを選んだ理由はどこにあったんですか?

 

木原 セレクトが好きなのはもちろんなのですが、ドレススタイルからカジュアルスタイルまで様々な人がいて、テイストは異なってもひとつの方向に向かっている会社だな、という印象を受けたんです。多様性と個性の集合体で会社が成り立っているところがとてもカッコよく感じられたのが、ここで働きたいと思った理由です。

 

 

―木原さんがよりファッションに傾倒していったのは、社会人になってからだったのでしょうか?

 

木原 そうですね。それまでは洋服屋でアルバイトをしたこともなかったですし。野球が一番で、次に好きだったのが洋服だった、という感じでしたから。

 

 

―ユナイテッドアローズに入社してこの人凄いな、と思った先輩はいらっしゃいますか?

 

木原 ユナイテッドアローズに内定し、学生アルバイトとして最初、日本橋店に配属されました。当時の日本橋店は、場所柄もあって今以上にドレススタイルを中心とした品揃えだったんです。

 

働き始めた当初からジャケットを着て、革靴を履いて、といったドレススタイルで出勤はしていたんですが、ファッション専門の学校を出た訳でもないし、ドレススタイルのルールというものを学んだことがなかったので、川下(現新宿店)という先輩から正統な着こなしのルールを基礎から教えてもらいました。ドレススタイルがとても格好いい先輩で、大変勉強になりました。

 

まずは紺ブレとグレイのスラックスの組み合わせからスタートし、揃えておくべきアイテムを教えてもらい、靴はオールデンのコードバンを買いました。オールデンは学生時代にアメリカで買ったスエードを持っていたので、この時ようやくずっと憧れていたコードバンを買いました。タッセルスリッポンと990(プレーントゥ)です。シャツはそれまで着ていたブルックス ブラザーズやラルフローレンなどを着ていました。

 

そうして、日本橋店では接客から着こなしの基本をみっちり教わりました。スタッフ10名足らずの小さなお店だったので、先輩方がそれぞれの得意分野に関して丁寧に教えてくれる感じでしたね。

 

入社前から感じていたのですが、ユナイテッドアローズの人たちって、ドレスもデザイナーズも、カジュアルも同じ目線で見ている人が多いんです。様々なテイストをクロスオーバーさせるスタイリングが、ユナイテッドアローズらしさなのかなと思います。

 

 

―ユナイテッドアローズ日本橋店勤務後、2014年にユナイテッドアローズ六本木ヒルズ店に異動されました。どういった変化がありましたか?

 

木原 入社時からバイヤーになりたいという志がありまして、そのためには売上以外にも着こなしなどでも際立った存在にならないとダメだ、と先輩からアドバイスをもらったんです。

 

日本橋店では基礎を学んだので、六本木ヒルズ店では、バイヤーになるべく際立った存在にならなければと思っています。旗艦店である六本木ヒルズ店にはお客様が全国からいらっしゃいます。オーダー会も頻繁に開催していますし、たくさんの刺激を受けられる環境にあります。接客だけでなく、スタッフや取引先様とのコミュニケーションの機会も増えましたね。

 

 

―木原さんがユナイテッドアローズでカッコいいな、と思っている先輩はどなたですか?

 

木原 入社前から重松、栗野、鴨志田は素敵だなと憧れていました。内山太田豊永もお洒落で格好いいです。以前六本木で一緒に働いていて、今はビューティ&ユースにいる吉田剛郎もお洒落でいいなと思っています。自由なスタイリングで、サーフィンをすることもあってか、カジュアルな洋服が中心なんですが、ドレススタイルも決まっていて幅広いスタイルを持っていてカッコいい。パーソナリティを感じさせる着こなしの人です。

 

例えば、ジャケットに短パンをさらりと着ていたり、バティック柄のジャケットを上品なカジュアルで着こなしていたりと、自分のキャラクターに合った装いが上手なんです。

 

あとは重松のブランドである順理庵に携わっている藤松秀樹さんも格好いいです。渋くて変わらないスタイルを持っている人です。サンジェルマンスタイルを自身のテイストで着こなしています。

 

 

―社外で格好いいと思う方はいらっしゃいますか?

 

木原 恐れ多いのですが、ビームスの南雲(浩二郎)さん。あとはビームスのVMDの中島信司さん。

 

お二人とは面識がないのですが、街で見かけたり、知人から聞いたりして勝手に格好いいな、と憧れています。

 

同世代ですと、ビームスの間瀬裕介さん。今、一緒にYouTubeをやっています。あとトゥモローランドの川辺圭一郎さんもお店を越えて、一緒にやっています。

Do it with style.というYou Tubeチャンネルです。よかったら見てみてください(笑)。

 

海外の方ですと香港のThe Armoury(アーモリー)のアレン・シーさんとAnglo Italian(アングロイタリアン)のジェイク・グランサムさんです。二人とは連絡を取り合っている仲で、香港やロンドン、あとはフィレンツェで会ったことがあります。ファッションスタイルはもちろん、人柄も最高です。スタイルにそういったのがにじみ出ていてカッコいいんですよね。

 

 

―ところで六本木ヒルズ店に異動してから、注目し始めたブランドはありますか。

 

木原 ドレスクロージングがハイエンドなところまで豊富に揃っているので、それまで着たことのなかったブランドを手に取るようになり、カルーゾやアットリーニなども着るようになりました。

 

オーダー会が多く開催されているので、スピーゴラも作りました。ブランドやアイテムに関わらず、オーダー会が開催されるものはそのたびに作るようにしています。独身実家住まいなので(笑)、給料の半分以上は服代に消えていきます。家賃分は勉強と思って投資しています。

 

 

―木原さんはバイヤーの出張にも同行されていますよね。

 

木原 そうですね、6,7回行ったと思います。バイヤーになりたいって言ったら、じゃあイタリアに行ってみれば、と太田に言われて。そこでイタリア出張についていったら、オーダーのループにハマってしまいました。また戻ってくるためにオーダーする、みたいな感じです(笑)。

 

一番最初にオーダーしたのはリヴェラーノ&リヴェラーノで、アントニオさんと鴨志田に生地を選んでもらいました。その後、アットリーニに行って……みたいな。

 

 

―本当にハマってしまいましたね!  ところでお店では木原さんは顧客もたくさんついてらっしゃってセールスマスターという肩書きがあると聞きました。

 

木原 セールスマスターは、売上だけでなくお客様からもスタッフからも信頼される者が他薦で決まる肩書きで、1年周期で更新されます。中でも生涯販売員としてやっていく、プラチナの称号を持っている勤続25年以上のスタッフもいます。

 

 

―今は商品企画もされているんですよね

 

木原 なかなか海外に行かれない状況なので、買い付けではなく企画してオリジナル商品を作っています。2022年秋冬シーズンから店頭で展開される予定です。

 

 

―どのような商品を企画されたんですか?

 

木原 ユナイテッドアローズは季節感や素材をとても重視していて、例えば春夏ではソラーロやリネン、秋冬ではツイードやフランネルといったものなのですが、そのツイードを今ならこう着たいといった感じで、オーソドックスな素材を今の気分に落とし込んだ商品を提案しています。

 

 

―木原さんのインスタグラムを拝見すると、ここの角度から見ると美しい、とか色使いとかこだわりを随所に感じます。

 

木原 小学生の時の自由研究で、長岡の花火をテーマに選んで、絵を描いたんです。それを印象派の絵みたいだね、と言われ、印象派って何? と思ったんです。その頃ちょうど国立西洋美術館でモネの展示が行われていて、父と一緒に行き印象派というものを知りました。

 

そこで、この絵のタッチや色彩がいいなと思いました。その後中学生の時の夏の自由研究で、印象派とは、モネとは、というテーマでまとめたんです。その時にこの本を買いました。

 

 

そこからスタートして、デヴィッド・ホックニーのカラフルな絵が好きになったり、マーク・ロスコの配色が好きだったり、といった体験を経て、自分が心地よいと思える色使いにとても敏感になりました。そのときどきで手にする色や好みの色は変化しているのですが、そこには自分の感情や気持ちが常に反映されているわけです。

 

ですので、これはいい、と思ったクオリティのネクタイは、色の好みが変化するかもしれないので必ずカラーバリエーションを揃えています。ほかにもジョンロブのロペスは3色揃えていたり、これだ、と思ったものは色違いや素材違いで揃えることが多いです。

 

印象派の絵を見ることもあればポップアートを見ることもあり、自分にとって心地よいものであるかという基準の中で感じ方に変化はあれど、洋服も同じ、その時によって異なる色や素材を身につけたくなりますね。

 

 

―ところで木原さんは食べ歩きもお好きなんですよね。インスタグラムを拝見するとお洒落なお店に行っていますよね。

 

木原 お洒落なお店ばかりという事はありません。町中華も行きますよ! 料理も洋服も同じで、丁寧に思いを込めて作られたものに惹かれます。人の温もりやクラフトマンシップを感じさせるものが大好きなんです。

 

 

 

―また色の話に戻りますが、最近、気に入っている色味はありますか。

 

木原 コロナ禍になって黒いアイテムやミニマルな雰囲気が多くなってきていたのですが、華やかな色合いが気になっていますね。積極的にもう一歩前に出るような色や柄を使った着こなしをしたいです。

 

 

―それはご自身の企画する商品にも反映されているんでしょうか。

 

木原 企画する商品はユナイテッドアローズというフィルターを通してのものになるのですが、その中でもコアなアイテムに関しては自分の色を出しています。企画したアイテムを見た先輩方には木原っぽいね、と言われました。

 

 

―それは木原さんらしさ、個性、スタイルが確立され、かつ認知されているということでもありますよね。そんな木原さんがご自身の定番として身に付けているものは何かありますか。

 

木原 学生時代から変わらないのはブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツとリーバイスのデニム7本くらいですね。501と517、505もあります。501はホワイト、505はブラックもあります。あと紺のブレザーは常にクローゼットにありますし、革靴もずっと好きです。

 

 

―スニーカーは何派ですか?

 

木原 コンバースです。ひと通り全部履いてそうなりました。ヴァンズ、ニューバランス、学生時代はナイキなども履いていました。エアフォースやエアマックスが欲しいとか、両親や叔母にねだっていましたね。

 

 

―木原さんがつけていらっしゃる時計ですが、ベルトは付け替えていますか? グレイですかね?

 

木原 はい、替えています。ここ数年こういったグレイの色合いに惹かれています。茶でも黒でも合うので便利なんです。時計のベルトはクロンヌというお店のものです。ヴァシュロン・コンスタンタンのものはオーダーして作りました。

 

左から、パテックフィリップのカラトラバ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ユニバーサルジュネーブはジェラルド・ジェンタが手掛けたコレクションです。すべてベルトは替えています。グレイのベルトはどんな色味の服にも合わせやすいんです。

 

 

ー色を前面に出していきたいな、とおっしゃっていましたが、そんな中で注目しているブランドはありますか?

 

木原 色で、というのではないのですが、リュテスですね。パリに行ったら見てみたいなと思っています。アルニスのような雰囲気も感じます。

 

 

―木原さんが考えるテーラードスタイルの今の着こなしは?

 

木原 自由に着こなしていいかな、と思います。ウエストの絞りがあまり効いていないものなど、時代に合った柔らかい仕立てとシルエットもいいと思います、一方、肩の入った、コンケープトショルダーのような、しっかりした作り服も着たいなと思う気持ちもあります。

 

 

―テーラードスタイルの時に大切にしていることは何でしょうか?

 

木原 ルールを理解した上で、着崩すのか、アレンジを加える。ルールがあっての着こなしだと思うんです。型があって、型を破る、というのは型破りになるのですが、型をきちんと意識してから、破る、というか自分らしさを落とし込んでいくということは意識しています。

 

 

―木原さんにとってのサルトリアルヒーローはどなたになりますか?

 

木原 鴨志田ですね。ただただ格好いいです。洋服やスタイル、買い物への熱量が半端ない。特にスーツスタイルは一番格好いいと思います。そういう人が近くにいるということは、今の自分に多大な影響を与えています。

 

 

―色違いで揃えていたりと、こだわりのあるネクタイですが、好きなネクタイはどのようなものですか?

 

木原 やはり色と素材感で選びます。シャルベのウールシルクは秋冬に着けています。リネンシルクは春夏です。日本には四季もあり、旬を大切にする文化があると思います。素材感が醸し出す奥行きや風合い、雰囲気はスタイリングを組んだ時に出てくるもので、素材感が合っていることで全体にまとまりが出ますよね。

 

シャルベ以外のものも起毛感のあるものなど、表情のある素材を選びます。プリントだったら、色や発色が大切かと思います。今日のネクタイは色のきれいな幾何学柄のプリントです。

 

 

―ネクタイのノットの作り方はどうされていますか? 

 

木原 あまり大きくなり過ぎないようにしています。三つ巻やセッテピエゲの時は、フワッとさせて程よいバランスにしています。ラペルやシャツの襟の大きさ、素材とのバランスに関してはすごく気にしています。ポケットチーフは、これ見よがしでないように心がけています。

 

 

―ドレスシャツへのこだわりはありますか?

 

木原 程よいゆとりを持たせ、着丈は長めにとってオーダーをしています。タブカラーも好きです。そろそろスーツが楽しい季節になってくるので、カラーピンを用いたり、ピンホールのシャツを着たり、といった装いもしてみたいですね。装飾を施したり、少し盛った装いですね。

 

 

―スーツはいかがでしょう。

 

木原 オーダーに関しては、基本的にお任せしていますが、パンツの丈はハーフクッションからワンクッションにして気持ち長めにとっています。

 

 

―さて、木原さんを構成する様々なアイテムを今日は持ってきていただいたのですが、見せていただけますか?

 

どちらもアットリーニのス ミズーラです。左はフランネルのネイビーに赤のストライプ生地で、出張先のロンドンで見かけたおじいさんをイメージして作ってもらいました。右は3年前に作ったもの。リネン100%で、デニムでもスラックスでも合い、汎用性の高さも魅力です。アットリーニはナポリ的な温かみがありつつも東京の街でも映えるところが気に入っています。クラフツマンシップを感じさせ、端正なところも魅力ですね。

 

 

ともにカルーゾです。左はミラノのショールームで見て気に入って購入したリネンシルクのタキシードです。茶色というところがいいな、と。カットソーやスリッポンを合わせて着ています。右はスミズーラでこちらも茶色でコットン素材です。カルーゾの工場見学に訪れた際にお願いしました。

 

 

ブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツは定番です。サルヴァトーレ ピッコロのシャツはブルーストライプのオックスフォード地で6つボタン、ブルックス ブラザーズのシャツと同じような感覚で着ています。

 

 

色味を足す役割を果たしてくれるシャツも、私にとっては重要なワードローブです。イエローと白のロンドンストライプはターンブル&アッサー、ブルーのオルタネートストライプはシャルベ、グレイとオレンジと白のストライプはカモシタです。

 

 

シャツもオーダーが多く、タブカラーが好きです。タブカラーのものはエリコ フォルミコラとアヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノ。左下のレギュラーカラーはターンブル&アッサー、右下はアヴィーノ ラボラトリオ ナポレターノです。

 

 

ネクタイは素材に表情のあるものが好きで、これらは起毛素材のもの。茶のヘリンボーン柄とグレイ×パープルのものはリヴェラーノ&リヴェラーノ、グリーン×ネイビーのものはアングロイタリアンとジョシュアエリスのコラボ、グレイの千鳥格子はアットリーニです。

 

 

アルニスのネクタイは、このピッチと色が気に入っています。フランスらしい色彩感覚が好きです。

 

 

ベグ&コーのスカーフはカシミアのふんわりとした肌触りで、色違いで購入するほど気に入っています。

 

 

シャルベやドレイクス、プラダ、ユーゲン、フラテッリ ルイージなどのスカーフは、首元に色を足すアイテムとして重宝しています。

 

 

左からジェイエムウエストンのリザード、グイドのスエード、マノロ ブラニクの布帛素材のスリッポンシューズです。スリッポンシューズは気軽に履けるのがいいですね。ドレスダウンやカジュアルアップしたいときに、足元に合わせると品の良いカジュアルが楽しめます。

 

 

どちらもオーダーした靴です。左はスピーゴラ、右はボードイン&ランジです。

 

 

クロムハーツも好きです。クラシックなスタイルにクロムハーツを素敵にミックスされている先輩を見て、格好いいなと思いました。これ見よがしではなく、さり気なくスタイリングに取り入れるのが好きです。気になったタイミングで少しずつ買い足しています。

 

 

数年前に購入したCPOシャツはコットン100%のダック素材で着倒してクタクタになる頃を楽しみにしています。

 

 

―最後に、木原さんの今日の服を教えていただけますか。

 

 

木原 今日はソラーロを新鮮に自分らしくどうやって着こなすか、をテーマにコーディネートしました。最近はまた印象派の絵画からインスピレーションを得た配色が好きなんですが、ぼやけないようにどこかにメリハリをつけるよう意識しています。シャツの気持ち薄いトーンやローファーのグレイがかったブラウンスエードなど、微細な色合いにこだわって自分らしさを出しました。

 

スーツはソブリンの2022春夏もので、シャツもソブリンです。ネクタイはアルクーリ。リネンコットンのチーフはフラテッリ ルイージ。気に入って、後から買えなくなって後悔するといけないので2色買いました。

 

時計はパテック フィリップのカラトラバです。コロナ禍の前にタイミングよく買えました。

 

 

靴はジョン ロブです。

 

 

 

―今日はありがとうございました!

 

 

Suit Sovereign

 

Shirt  Sovereign

 

Pocket Square Fratelli Luigi

 

Tie   Arcuri

 

Watch  Patek Phillipe

 

Hose  United Arrows

 

Shoes John Lobb

 

 

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